名作未読の一冊。160ページの薄い本で半日足らずの一気読み、息詰めて読んだからか頭がズキンズキンと痛くなってしまったのだった。名にたがわぬ重厚な作品。
ぼんやり大男と小粒のピリッとした男の組み合わせ、カリフォルニアの農場を転々として働く二人は友情ならぬ助け合いや思いやりで離れがたい。スタインベック描くこの二人の人間関係は、緻密な風景背景描写と相まって人間のいとなみの奥深さを感じさせる。滑らかな大浦暁生氏訳も素晴らしい。
力ばかり強くて頭の弱いレニーの愚かな行動は、胸震える痛ましさ。彼を見守るジョージの温かさは人間捨てたものではない思わされる。農場に雇われている黒人の孤独や農場でけがをして身体障害になった者の悲しみなどが、二人を取り巻く。威張りちらす農場の親方の息子が登場して事件が起こる。そして結末がアメリカらしいというか、銃なのがたまらなく重かった。