カテゴリ:読書メモ
優れた、読み継がれる時代小説は、その書かれた時代にシンクロ・フィットすると思っています。同時代に影響された思想や、ありたい世の中への希望や、そこはかとない懐かしみを盛り合わせて創造するのです。
山本周五郎の生真面目な剛直とまで言える精神(戦後復興期)、池波正太郎の洒脱さにくるまれた暖かい人間観察(高度経済成長期)、藤沢周平の哀愁こもった深い情緒(安定成長期)が今までのわたしをとらえました。 辻堂魁さんはまた、異なった方向から時代小説に切り取ってくれます。 北町奉行所平同心日暮さんの「事件簿」ではないのです。「始末帖」なのです。でてくる事件はありふれています、けれども事件を単に解決することだけではなく、収めどころが憎いのです。「悪いことは悪いばかりじゃない」「法に反しているがお目こぼしがあっていい」大げさに言えば多様性のように思えます。今の時代にとても必要なことですね。 3話収録してあるのですが、「序」の章もありましてそれが「親のしつけ」ですよ、現代における耳に痛い話じゃないですか、1話2話がそう。 (いまのところ)シリーズ7巻まであるので、いろいろの提起があるのではないかと思っております。 余談ですが、事件の舞台として江戸の町名が、うるさいくらい詳しく出てきます(よく調べてあります)。そりゃそうでしょう、江戸時代は歩くのが当たり前なんですから、人物が動けば、この町からあの町までとなる。 今では東京の街はすっかり郵便住所表示になってしまいましたけど、昭和時代、旧町名で成長したわたしなどにはとても、とても懐かしいものです。そういうところでも時代物はいいですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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