カテゴリ:読書メモ
『持続可能な魂の利用』松田青子
一人の女性が子供・少女時代からおとなになるまでの防御的自己確立の軌跡と言おうか。 男性たち(作者はそれをおじさんの目と言う)からの幼児時代の小さなセクハラ(例えば写真撮らせてと近ずく)や、混んだ電車中での痴漢経験、夜道の怖い思いなどが、自意識過剰な防御の習い性になり、おとなしめの女性に。派遣社員として働く会社でのある男からの巧妙なセクハラもどきいじめに合い、離職させられ精神を病む。そしてそれから脱出、自立するまでをヒロイン「敬子」を中心に、様々な女性のシーンにことよせて、ファンタスティックに描いている。 小説の設定は現代なのに、わたしの昭和時代と変わらないんだね。高校時代の混んだ都電での痴漢(後からわかったのだけど、犯人は母校の先生だった。もちろんうやむやに)夜道で変なもの見せられたり(蹴とばしてやればよかったのに)就職すればしたで、暗黙の27歳定年制、男性たちのある種のうわさばなしで辞めていった人が何人いただろうか。 とただ、ただ愚痴っているのではいけない。この世からある一定の男性(作者の言うおじさん)が消えればいいのか、解決策はファンタジーではいけない。言っていくしかないんだね。この世は半分は女性だから。作者は「おばちゃん」という言葉も言う、そう「おばちゃん」は強い、「ばばちゃん」はもっと強いよ。 さてさて、ネタバレになるけど小説によると、縮小しなければ成り立たない世界の中で「国をたたむくじ引き」を一番に引き当てたのが日本なのだと。いまの日本のありさまをみていると、作者の皮肉、秀逸だね。(いやいや、そんなこと許せないけど) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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