本に呼ばれているような気がして、未知の本を手に取ることがある、書籍店で、図書館で。
読んでみて当たる(おもしろい)ときもあれば、そんなでもないときもあるが、引き込まれて読了した。
そんな一冊。『ブラック・リバー』S・M・ハルス
アメリカの北モンタナ州で、長年にわたり刑務所で刑務官を務めた60歳のウェズリーの来し方と、現在を交錯する切ない物語。
余命いくばくの妻が奏でて欲しいと望む、夫の得意なフィドルが弾けないわけは、刑務所勤めの時の暴動で酷いけがを負ったから。妻が亡くなって5日めに、その勤めていた刑務所のあるブラック・リバーに18年ぶりに戻るウェズリー。そこには妻の連れ子と、その義理の息子に贈与した自分の家がある。なぜ、モンタナから隣のワシントン州に18年も住んでいたのか?なさぬ仲の息子との苦しい行き違い、刑務所での暴動事件の爪痕など、次々と明かされるストーリーが凄まじい。読んでいて苦しくなる。また、武器社会のアメリカならではの暴力なのかとも思い暗澹となる。
抑えた語り口。はじめ作者は男性と思っていたが、女性作家だったので驚く。おかしい言い方だがアメリカらしい作品の一つ。