吉田修一『湖の女たち』
感想を思いめぐらしていたら、もう一度始めからしっかり読んでしまった一冊。
感想書きプロではないのに間を置かずに再読するなどと、長い読書人生初めてのこと。
社会派ミステリーに属する内容と思われるのだが、登場する刑事たちがなにしろ悪徳者そのもの。
でも、なぜか排除できないものもあるのだ。
罪ありきの過酷な取り調べ、冤罪になりそうな筋書きを作る刑事たち。おまけに聴取している参考人との不徳な関係は何なんだと思う。
その警察官圭介と事件関係者佳代との不倫関係は、強烈なサディズムとマゾヒズムの関係。不道徳極まりないと嫌悪するも、なんと生き生きと描かれていることか。
そしてその陰に隠れるように、もみ消される近年の薬害禍、戦前の細菌戦人体実験が揺曳する内容。
読後自分に問いかける、そんな現実もある、そういう現世を過ごしてもいるのじゃないかと。
「清張刑事もの」とは真逆だ。
思いついて松本清張作品の刑事ものを読みたくなり、
『砂の器』を再読してみて(これも超特急で再読!!)登場する刑事さんたちの汗水たらし、体を張って苦労して一歩一歩地道に捜査する姿に、なにか心静まる気がしてくるのだった。けれどもいい人ばかりいて、社会の悪を成敗するなんて、おとぎ話なのかもしれない。
もう一度、琵琶湖に行ってみたくもなった、琵琶湖の景色描写が印象的。