『影法師』百田尚樹
主人公は下級武士から、筆頭家老にまで出世した。本人の才能・努力もあったが、その陰には親友の一生を棒に振るくらいの凄まじい助けが人知れず行われていたので、とは読み始めてすぐわかる。親友のために「影法師で」人生を終える。自分が犠牲になるのは男の美学とでも言うように。男が男に惚れて、頑固なまでに自分を捨てるように尽くす。百田さん、なかなか読ませる筆力でおもしろくて一気に読まさせられたが「う~ん、これが男の美学?・・・バカげていないか?」と、十パひとからげに言うのもなんだけど(女のわたしだからか)「なんだかなあ、無駄な人生じゃないか」と思ってしまう。 男の美学にはわからないところが多い。わからないと言えば、この小説、ストーリーと雰囲気は違うが、なんとなく漱石さんの「こころ」を思い出させる。「こころ」若い時から何回も読んでるのだが、わからないでもないのにやっぱりすっきりしていないような気がして、もう一度読みたくなった。夏目漱石さん、没後100年、この頃盛んに著作が紹介されている。わたしの持ち本、新潮文庫版は孫娘に渡してしまったので本屋に行く。ところがその新潮文庫版新たに肖像画が表紙にかぶされている。しかも、あの有名な白黒肖像写真が変なカラー写真加工されて、作品によって色違いで書棚にずらーっと並んでるのだ。ええっ!趣味悪い~~!(と思いませんか?)わたしは活字が小さいのでホントは読みにくくて嫌なのだが、岩波文庫の、表紙はあの有名な朱色に文字の方を購入してしまった。今、再読している。 新潮文庫版、この安野光雅さんの表紙だったのに この白黒写真が華やかなカラーに色付けされて、安野さんの表紙の上にかぶせられている。ま、わたしのこだわり。