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カテゴリ:読書日記
V.E.フランクル「夜と霧」(みすず書房)を読む。
副題は「ドイツ強制収容所の体験記録」となっていて、その題 名が喚起する重苦しいイメージのために、私は長い間、この本 を手にすることをためらってきた。 ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量殺りくを扱った活字や映 像は時に、その情報があまりに日常からかけ離れているため、 私たちの思考を停止させてしまう。 だが「夜と霧」の目的は、収容所生活の凄惨さを紙の上に再現 することではない。 自身もユダヤ人として収容所生活を送りながら、著者フランク ルは心理学者の冷静なまなざしで、収容所に暮らす人びとの精 神状態を克明に描写していく。 肉体的にも精神的にも限界まで追い込まれた人びとが、夕焼け の美しさに表情を輝かせ、愛する人の面影に勇気づけられる「 内面化」の様子。 たとえすべてを奪われたように思われても、人間から「与えら れた事態にある態度をとる最後の自由」を取り去ることは誰に もできないという証明。 今日を生き延びるために、「人生から何かを期待する」のでは なく「人生が何を自分に期待しているか」という価値観の転回 が必要であること。 社会的地位も財産もこれまでの生活もすべて奪われたとき、人 の心には何が残るのか。 自分なら、同じ状況で何ができるだろうか。 …とまぁ固い話はともかく、好奇心でも軽い気持ちでもいいからそんなにこわくないから読んでみてね、と言いたかったのです。 深く胸に響くひと言が見つかるはず。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.11.14 10:01:00
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