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カテゴリ:読書日記
最近読んだ本。とまんが。
森まゆみ「抱きしめる、東京」。 地域雑誌「谷根千」編集人の森まゆみさんが、自身の生い立ちを東京下町の歴史と重ね合わせて描いている。 勢いのある文章をしっかり読ませる、たしかな筆力。 高度経済成長期、地上げに苦しむ下町の様子を描いたあたりは、著者の怒りと理想がにじみ出ていて、引き込まれながらも読み進めるのが少々苦しい。 街が異物をのみこむ過程には、大小さまざまな軋轢がつきもの。 そこには何か、個人の意志を超えたちからが働いているように思う。 時代は変化し、街はアメーバのようにかたちを変えてゆく。 善悪の判断や解釈はいつも、人間が後から付け加えるものだ。 願わくは森さんの底力のある筆で、彼女の少女時代の東京、あるいはいま、子育てを一段落させた森さんの目に映る21世紀の東京を、とことん活写したエッセイ集が読みたい。 安野モヨコ「働きマン」、待望の3巻。 1、 2巻を読んだのはちょうど、休職して帰ってきたころだった。 ずいぶん感情移入してね、泣きました。 私生活を投げ打って仕事にまみれる姿や、プライドだけで自分を奮い立たせてめちゃくちゃに突っ走る姿に。 情報を扱う仕事の儚さ、独特の高揚感、危うさ。 それらを手に取るように思い出して焦りもし、悔しくもあった。 けれど3巻を読んでいる間、わたしは一度も松方に自分を投影しなかった。 これは、わたしが途中で方向転換した道。 選ばなかった道の、その先にある物語だから。 「迷っている」とばかり思っていたけれど、本当はわたし、もう選んでいたんだな。 二ノ宮知子「のだめカンタービレ」16巻。ぎゃぼ。 パリ編も俄然おもしろくなってきたなー。 千秋とのだめの音楽がどんなふうに成長していくか、この先が楽しみ。 しかし、音のない世界に音楽を鳴らすこのひとの才能には、ちょっと鬼気迫るほどのものがあると思う。 いま、オケの出てくる小説を書いているので、その難しさはよくわかる。 読むひとを「聴きたい気持ちに」させるのではまだまだ筆が甘くて、読んだ人が「聴いたつもりに」ならなければ嘘なのだ。 わたしには、わたしのやり方があるはず。 とにかく、背すじがぞくっとするような演奏を、たくさん聴くこと。 さて。 本屋さんから帰ったら、出がけに煮込んでおいたあめ色玉ねぎカレーが、おいしく出来上がっていた。 いろんなスパイスや調味料を入れて、工夫して作るわたしのカレーはまあ、おいしいけれど、まだまだ年期が足りない感じ。 時間をかけて、時には寝かせて、じっくり煮込むことが大切。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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