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カテゴリ:読書日記
ポール・ボウルズ「シェルタリング・スカイ」を読む。
舞台はアフリカ。 アメリカの裕福な夫婦、ポートとキットが、日常に行き詰まりを感じ、旅に出るところから物語が始まる。 印象的なのは砂。そして灼熱の太陽。 砂のざらざらした感触や、日差しが皮膚を焼く痛みまで生々しく感じられる、綿密、というよりほとんど執拗な描写。 物語が急展開をみせる中盤以降、ページから目が離せなくなり、ほとんど一心不乱で明け方まで、一気に読んでしまった。 作家は、主人公たちに救済の筆を用意しない。 小説の初めに、大前提としてあったはずの枠組みさえ軽々と踏み越えて、物語は容赦なく展開する。 誰もが人生のどこかで感じたことのある、ごく近しい感情の積み重ねが、いつの間にか運命を遙か彼方へ運び去ってゆく。緩慢な不条理。 我々が一生をかけて見渡せる世界のなんと狭く、脆弱なことか。 これはわたしたちにも起こり得ること、ひとつづきの「空」の下にある別の秩序だ。 ボウルズというひとの小説には、麻薬的な魅力がある。 読み終えるまで知らなかったのだけど、4年前、ベルナルト・ベルトリッチ監督が「シェルタリング・スカイ」を映画化したんだそう。 それはさぞかし美しい映画だろう。ぜひ観なければ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.10.25 11:27:28
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