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カテゴリ:読書日記
ときどき、読み終えるのが惜しい本との幸運な出会いに恵まれる。
須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」も、そんな一冊。 イタリア、ミラノに長く暮らした須賀さんが、コルシア書店という街の小さな書店に集う仲間たちの悲喜こもごもを、成熟した筆でていねいにつづっている。 身体の大きな、直情家で寂しがり屋の神父。 貧しい人の面倒をみることを生きがいにする、ブルジョア階級のご婦人。 そして随所に、つとめて冷静かつ簡潔な文章で登場する、須賀さんの夫、ベッピーノ氏の若すぎる死。 登場する誰もがもれなく魅力的なのは、彼らを見つめる須賀さんのまなざしが、限りなくやさしく、鋭い観察眼と感受性に満ちているから。 午後の日だまりのような気持ちで読み進めていった先、本書の締めくくりには、人間の孤独に関する深い洞察があって、はっと目のさめる思いがする。 手元に置いて、繰り返し読みたい名著。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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