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カテゴリ:読書日記
いしいしんじ「プラネタリウムのふたご」を読む。
ひとりの人間が、これほど魅力的な人々を生き生きとえがき、それが一帖の物語になるなんて、この世の神秘だ。 プラネタリウムに捨てられた銀の髪のふたごは、ベテラン解説員の「泣き男」を父に、すくすくと育つ。 タットルはプラネタリウムの解説員、兼郵便配達夫に。 テンペルは世界を旅する希代の手品師に。 「星の運行」にしたがって生きるふたごと、ふたりを取り巻く人々の、あたたかくて容赦ない、やさしくてきびしい物語。 いしいしんじの物語はいつも、人智を超えた「何か大きくて黒いもの」の存在に裏付けられている。 読者はその残酷さに愕然とし、慈悲ぶかさに涙し、いつの間にか物語に引き込まれて目が離せなくなる。 それにしてもテンペルが、ステージで見せる鮮やかな手品の数々を描写するシーンは圧巻。 挿絵はひとつもないのに、文字だけで、テンペルと彼の一座の姿を、細部まではっきりと読者のまぶたに焼き付けてしまう。 これはぜひ、日本の技術でアニメーションにして欲しいなあ。 銀の髪の、美しいマジシャン。 見分けがつかないほどよく似た、星の語り部。 きっと、とても美しい映画ができると思う。 宮崎駿さん、お願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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