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テーマ:仕事しごとシゴト(23735)
カテゴリ:おしごと日記
こつこつと準備をしてきた同期のひとたちの研修が始まる。
膨大な資料をそろえ、会議室のレイアウトをし、懇親会の最終チェックをし、我ながら大活躍。 「bisさん、今回はほんとによく働いたねー」と上司にしみじみ言われる。 講師の先生をお迎えに行くとき、ひさしぶりにちょっとだけハイヤーに乗った。なつかしい。 車の窓から、綺麗に色づいたイチョウ並木が見えて、得した気分。 表参道のイルミネーションが今年からまた始まったことを、運転手さんに教わる。 ひとつの仕事で、ふたつ、得しちゃった。 懇親会で受付をしていたら、入社するときとてもお世話になったえらいひとに声をかけられた。 「もしかして…bisだよね?」って。 …あの、わたし、半年前から本社にいるんですが。 週に1度は廊下ですれ違って、そのたびにあいさつしていたのに、あなたはまるで知らない人みたいにそっけないから、「記者じゃなくなったら所詮こんなもんなのね」って寂しく思っていたんですよ! というようなことをやんわりと伝えたら、「ごめんごめん。だって入社したときはもっとぽっちゃりしてたから」だって。 ふんだ。どうせむちむちに太ってましたよーだ。 それに今日、わたしはひさしぶりに、あのころのような黒いスーツを着て、一時期のように髪を結っていたからね。 病気になったいきさつや今の仕事の話を少しだけ、あとは冗談を言って笑っていたら、彼はふっと真顔になって、「俺のところに来るか?」と言った。 びっくりして、何も言えなくなってしまった。 会社には、会社の論理というものがあり、それは個人の一存でねじ曲げられるようなものではないし、仮に無理やり曲げたとしても、そのおつりはきっちり、ずるをした本人に返ってくる。 そんなことは、相手もわたしも当然わかっていて、だから、結局彼の言葉は嘘なんだけど、嘘とわかっていてもうれしかった。 実現できないということを忘れるくらい心から、そう思ってくれたことがわかったから。 いやだなあ、冗談ですよね。というつもりで黙って笑うほかに、わたしにできることがあっただろうか。 相手もはっと気がついた顔をして、少し困ったように笑い返した。 このひとの期待に応えられないということを、わたしはあのときもこのときもいつも、心のどこかで申し訳なく思っていた気がするのだ。 今夜を境に、わたしは、「あのひとの期待に応えなくちゃ」と思う理由をひとつずつ失っていくだろう。 変だなあ。 ほっとするはずだったのに。 わき上がってくる、この途方もない寂しさはなんだろう? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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