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カテゴリ:読書日記
吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」を読む。
まず、題名が魅力的だと思いませんか、食いしんぼうのみなさん! 長いのに語呂がいいし、ぐぐっと惹きつけられる。 主人公は(エッセイだとすれば著者は)なぜ、スープのことばかり考えて暮らすようになるのか。 「それからは」の「それ」って、どんな出来事なんだろう… 表紙をめくる前から、早くもわれわれがスープのことばかり考えるようになってしまうのです。 吉田さんは、未来から送られてきた古書目録や、ふしぎな職業図鑑、ありそうでないものの図鑑、古くて珍しい随筆集の復刻版などを制作する「クラフト・エヴィング商會」の一員です。 ひとつタネを明かしてしまうと、「それからはスープのことばかり考えて暮らした」は、吉田さんによって書かれた小説です。 そしてもうひとつ言ってしまうと、オーリィくんという男のひとが主人公です。 世にもおいしいサンドイッチ屋「トロワ」や、犬が店番をする儲からない映画館「月舟シネマ」、オーリィくんの部屋などが主な舞台です。 オーリィくんのほかに、緑の帽子のご婦人。宙返りの得意な子どもなどが登場します。 これ以上しゃべるとつまらなくなってしまうので、ぐっとがまん。 大人のための、とても質のいいファンタジーです。 吉田さんのつむぐ物語は、本当に魅力的で印象的で、人生をちょっとだけ、でも確実に豊かにしてくれます。 たくさんのひとが読んでくれたらいいな。 最後に、ひとつだけ注意を。 この本を読むときは、お手元に、あなたが知っている中でいちばんおいしいサンドイッチと、スープを用意してください。 食べたくなります、ぜったいに。 「かもめ食堂」でおにぎりが食べたくなるのと同じくらい、百発百中です。 わたしは途中でいてもたってもいられなくなり、部屋着にコートを羽織って部屋を飛び出し、自転車を立ちこぎしてスーパーに駆け込み、サンドイッチ用のパンを買ってきて、夜食と翌日のお弁当用に、ふわふわ卵とジャム、ハチミツのサンドイッチをそれぞれたっぷり作りました。 作り置きのスープを温めて、ゆっくり飲みながらサンドイッチをいただく。合間に本もめくる。至福です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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