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カテゴリ:読書日記
青木玉「幸田文の箪笥の引き出し」読了。 玉さんは、幸田文の娘さんなのです。 そして文さんは、文豪幸田露伴先生のお嬢さま。 この本には、文さんの着物まわりあれこれが、愛情のこもった娘のまなざしで豊かに描かれています。 文さんが露伴先生を描いた「父・こんなこと」も、切々としたおやこの情が伝わってくる名著だけれど、玉さんの筆には、お母さんとは少し違うふくよかさがある。 母娘では時代が違うのはもちろんですが、何よりも題材が「きもの」ですからね。 着物は単なる衣装ではなく、華麗で豊饒な日本の文化です。 日常的に着物を身につけていた時代の女性には「矜持」という言葉が似合う。 どんなときも、揺るがない「芯」が体の中心にあって、その芯を帯でぎゅっと中心に保ちながら生活していたように思われる。 もちろん、わたしは年に数えるほどしか着物を着ないので、書物や人の話から推察するのだけれど。 体の姿勢は心の姿勢に大きく影響するし、逆もまた然り。 着物を着ると、気持ちの真ん中が凜と張りつめるのは、それが今の時代に珍しい衣装だから、というだけの理由ではないのだろうな。 着物の魅力もさることながら、娘だからこそ垣間見ることのできた文さんの素顔も、この随筆集の読みどころ。 「気っぷのいい」女性として知られる文さんの、かわいらしい一面や思いがけない繊細な一面も描かれていて、同じ女として何だか親しい気持ちになれる。 一冊読み通せば、すぐに着物が着たくなること請け合いです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.02.02 12:51:28
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