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カテゴリ:読書日記
武田百合子「犬が星見た-ロシア旅行」読了。
百合子さんは、「ひかりごけ」で有名な小説家武田泰淳先生の奥さまなのです。 「犬が星を見るような」純粋さで、夫と共に訪れたロシア旅行のあれこれを綴った旅行記。 こういう文章を、軽妙というのだろうなあ。 まっすぐで、芯があって、でも柔軟で、百合子さんの魅力が行間からたちのぼってくる。 どこを開いても愉快でめずらしいエピソードばかりなのだけれど、わたしが特に気に入ったのは、次のようなはなし。 泰淳氏に酒を買いに行けと言われ、ひとりで出かけたものの、なかなか酒屋にたどり着けない百合子さん。 アル中の女と勘ちがいされたりしながら、やっと酒を買ってホテルに帰ると、泰淳氏は泣きそうな顔でしょげ返っている。 友人の竹内氏に、そら見ろ。君があごで使うから、百合子さんはいなくなってしまったんだ。もう帰ってこないだろうよ、というようなことを言われたらしい。 どんな場面も楽しんで切り抜けてしまう百合子さんの突き抜けた純真さと、いばっていても本当は百合子さんを大切に思っている泰淳先生の素顔が垣間見えて、何度読み返してもくすくす笑ってしまう。 次は「富士日記」を読むつもり。時間をかけて、ゆっくり楽しもう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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