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カテゴリ:こころもよう
行きの飛行機は、思ったほど揺れなかった。
吹雪で予定の空港に着陸できない場合、道内の別の空港に降りることがあります、という条件付きチケットだったので少し心配したのだけれど、ぶじ、予定通りの空港に降りた。 雪は音もなく、しんしんと降り積もっている。 空港のラーメン屋には、女の人しか働いていない。 そのせいかどうか、店はいつも清潔で、味も安定している。 何も入っていない塩ラーメンを頼み、ゆっくり食べる。 正午すぎの飛行機で発ったのに、祖母が晩年を暮らした叔母の家に着いたら、もう辺りが真っ暗だった。 車を降りて、「忌中」の紙が貼られた玄関の前に立ったとき、足元の雪が、ふわっと匂い立った。 ああ、そうだった。 積もった雪には、微かだけれどにおいがある。 そんなこと、たぶんもう20年以上忘れていたな、と思いながらたたきで靴についた雪を落とし、玄関を入る。 半年ぶりに見る祖母の体は、痩せて小さくなっていた。 痩せるとますます、わたしとそっくりの骨格をしている。 頬骨の具合や顎の角度などを、近くに寄ってじっと見る。 明後日には、もう見られなくなってしまうから、瞳の奥に焼き付けるつもりで、じっと見る。 祖母のすがたを焼き付けた目の奥から、涙がゆっくりにじんでくる。 目の前がぼやけて、何も見えなくなった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.02.21 16:23:43
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