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カテゴリ:読書日記
「暮しの手帖」別冊「わたしの好きなキッチン用品」を読む。
使い込まれて変色した五味太郎のパスタ鍋。 祖母の代から使いつづけ、短くなった包丁。 梨木香歩の台所エッセイ。 さまざまなお宅の台所全景写真。 大阪千日前で台所用品お買い物ルポ。 1ページずつ、惜しむように読む。 台所写真など、ページに目玉をくっつけるようにしてすみずみまで見る。 ぶらさがった銀のおたまや鍋。 よく磨かれた、あるいは古くなって変色したシンク。 大きな冷蔵庫。 空き瓶の一輪差し。 そして、ほとんど恍惚と言ってもいいような満ち足りた気持ちになる。 もともと料理は嫌いじゃなかったけど、なぜここに来て突然台所に取り憑かれてしまったのだ、わたしよ。 「お姉ちゃんって…凝り性だよね」 大根を使い終わった後、頭を5ミリくらい切って、水を張った皿にのせておくと、いくらでも青い葉っぱが出てくるんだよ。何回も大根葉のみそ汁がのめるよ。という知識を披露したら、しばらく黙った後、妹は言った。 たしかに。 思えば一輪車をおぼえたときは、どこへ行くにも一輪車で出かけた。 気分はサーカスの娘。 図書館通い然り、アロマテラピー然り。 そして、台所に至る。 今の部屋の台所は、とても小さい。 小さいなりの工夫もわりと楽しいし、ひとり暮らしなのでそんなに大きな台所は必要ないんだけど。 機能的で使い込まれた、家族のための大台所を仕切る主になるのが、ささやかな夢。 ぴかぴかのシステムキッチンじゃなくていいから、古びても清潔に、わたしの仕事に合わせて収納や置き場所を工夫して。 鉄瓶の口からしゅんしゅんたちのぼる湯気。 包丁が木のまな板をたたく、あたたかい音。 たくさんぶら下がった金属製のかご。 大きな鍋で煮えるみそ汁。 「ザ・お母ちゃんの台所」だ。 ああ、考えるだけでうっとりしてしまう。 頭の芯がほわーっとあったまる。 夢はひろがるなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.07 15:20:53
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