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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

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2007.07.03
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カテゴリ:読書日記
星野道夫「Alska 風のような物語」(大判)を図書館で借り出してきて、めくっている。
写真。大きな。
草原いっぱいに広がり、同じ方向を目指すカリブーの群れ。
息をのむ。
「カリブー」という動物の名前をわたしが初めて目にしたのは「リングライズ リングセット」というSF小説の中だった。
だからずいぶん大きくなるまで、「カリブー」というのは空想上の動物だと思っていた。
星野さんの写真で、初めてその姿を目にした。
みっしり毛の生えた立派な角。
森の中に角だけが残されて、静かに苔むしている、という写真もある。
口をぽかんと開いて、呆然と見とれる。
本当にいるんだ、カリブー。

カリブーに限らず、星野さんの写真を見ると、わたしはまるでこの世に産み落とされたばかりの子供みたいに、ぽかんと口を開けて世界の「ほんとう」に見とれてしまう。

本当に川でサケを捕って食べるんだ、クマ。
本当においしいんだな、川を上ってくるサケは。だって、クマがこんなに夢中になって食べている。
本当にあたたかいんだ、シロクマの毛皮。
オオカミは本当にヤギの仔をつかまえて食べるんだ。

 *

エスキモーの若者に自殺が増えている、ということに触れた文章で、「僕はこの問題を語ることに少し戸惑う」と書いていることに軽いショックを受ける。
「迷う」でも「躊躇する」でもなく、「戸惑う」だ。
なんて謙虚なのだろう、この人は。
自然の前に、人間の前に、世界の前に、そっと跪いて、その目で見たものを写真に撮る。言葉にする。
ほんとうに、心の底からそれだけなのだ、星野さんは。
支配したり解釈したり上から見下ろすことに慣れきったわたしも、少しだけその純粋さに近づけた気がして、少し涙ぐむ。
星野さんは亡くなった後も、こうやって少しずつ世界をきれいにしている。





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Last updated  2007.07.03 17:53:55
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