|
カテゴリ:こころもよう
文化的上司さまのお見舞いに行く。
ずいぶん痩せたけれど、静かでやさしい、そしてとても力強い目をしていた。 病気のことを話す口調にすら、わたしたちが感じたのはまっすぐで圧倒的な強さだった。 会社にいるときより少しゆっくりした、けれどいつも通りの穏やかな話しかた。 結婚の報告をしたら、彼はまっすぐわたしの目を見て、顔じゅうに嬉しさをたたえて、何度も何度も「おめでとう」を言ってくれた。 涙が出そうだったけど、深呼吸して腹に力を入れ、わたしも笑った。 わたしの幸せが、ちゃんと伝わるように。 そのことが、1分でも1秒でもいい。 彼の気持ちを、明るくするように。 * 病院を出たら、町は夕闇に包まれていた。 涼しい風が半袖の腕をさっと撫でてゆく。 励まされたのは、勇気をもらったのは、背中を押してもらったのは、わたしのほうじゃないか。 お見舞いにきたのに、はずかしい。ありがたい。胸がくるしい。幸せで、かなしい。 街灯の白い光が、ぼんやりとにじむ。 にじんで、辺りの景色に溶けていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.07.09 17:25:53
コメント(0) | コメントを書く
[こころもよう] カテゴリの最新記事
|