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カテゴリ:花嫁日記
夏休み前の仕事を終えて、当面の懸案事項を引き継ぎ、新幹線に乗る。 会社には昨日、新しい上司がきた。 夏休み明けには、わたしの仕事を引き継ぐ女性も来ることになっている。 よきにつけ悪しきにつけ、すべては変わっていく。 お父さんやお兄ちゃんに見守られてここで過ごした夢のような時間は、きっと神さまがくれたご褒美の奇跡だったのだ。 夕方の切なさに、例によって頭がおかしくなりそうになり、歯を食いしばってほとんど泣きながら新幹線に乗り込む。 結婚はおめでたいこと、素晴らしいこと、喜ばしいこと。 世の中の人はたいていそう考えているし、もちろんわたしだってそう思っている。 けれど、それとは別の次元で、苦しくて悲しくて切ない、途方もないエネルギーを使う難事業でもある。 喜びと悲しみはいつだって表裏一体で、どちらかがとりたてて素晴らしいわけじゃない。どちらかが否定したり隠されるべきものでもない。 光の方へ歩いていくために、この体を引き裂かれるような辛さも、ちゃんとひとりで噛みしめて味わっておこうと思う。 新幹線を降りたら、ああ、夏の夜の甘い風。緑のにおい。 改札を出たところにはちゃんとくまが待っていて、何も言わずわたしの大きなかばんを受け取ってくれるだろう。 おなかに深く息を吸い込んで、階段に足をかける。 時間をかけて、ゆっくりのぼっていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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