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カテゴリ:読書日記
鈴木真砂女「銀座に生きる」を読む。 真砂女さんは俳人。そして銀座の小料理屋「卯波」のおかみさん。 老舗旅館の娘に生まれ、恋をふたつ、結婚は2回、それからたくさんの味わい深い句を残し、2年前に96歳で亡くなった。 わたしは真砂女さんの「羅(うすもの)や人悲します恋をして」という句がとても好きで、この艶っぽく切なく、それでいてさらりとした手ざわりの俳句をつくったのが一体どんな女性なのか、ずいぶん前から知りたいと思っていた。 「銀座に生きる」は、真砂女さんが俳句雑誌に連載していたエッセイをまとめたもの。 愛した人、ふるさとの町、そして銀座への思いが綴られている。 その筆の潔さと言ったら! 同じ女性として、うっとりせずにいられない。 八十歳を過ぎても、手足の爪にマニキュアを欠かさない真砂女さんが、砂のない海辺で自分の足の爪をさくら貝にたとえるくだり、かわいらしさにぐっときた。 たぶん、とても美しいひとだったのだろうなあ。 真砂女さんの師匠、久保田万太郎氏やその門下生たちとの交流を読みつつ、俳句とともに生きる人生とはどんなものか、思いをめぐらせてみる。 小説とも、随筆とも、もちろん新聞記事とも違う、俳句という形式。 削りに削った後に残る、選び抜かれた言葉。 その余韻を、色紙にしたためて飾り、時には声に出して体に響かせ、自分の中に取り込んでゆっくり味わう。 ひとつの言葉が、永遠をはらむ。 なんという豊饒。なんという喜びだろう。 かくれ喪にあやめは花を落しけり 折に触れて口にしたいことばが、またひとつ増えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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