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カテゴリ:読書日記
荷造りもせずにコーヒー屋さんへ入り、最相葉月さんの「星新一 1001話をつくった人」を夢中で読む。 分厚い本でなかなか読みごたえがある。 途中で読みやすい本に浮気をしながら長く読んできたが、そろそろ読み終えて、引っ越し前に図書館へ返さなければ。 1000話を目指して書きすすむ星氏の鬼気迫る様子に、ページから目が上げられなくなり、あっという間に最後のページへたどり着く。 裏表紙を閉じた後も、本の世界から現実へ帰ってくるのが難しいほどで、テーブルの上にかがみ込んだまましばらく動けない。 最相さん…すごいひとだ。 これだけの取材を積み重ねていることはもちろん、取材から得た膨大な情報をいったん自分の中に取り込んで、ひとつの作品に昇華させるそのエネルギーも。 それにしても…とスーパーの袋をぶら下げて、帰り道をたどりながら思う。 それにしても、短編小説家として生きていくことは、なんてエネルギーのいることなのだろう。 短編も長編も、ひとつの世界を内包している点では同じ。 アイディアを出し構想を練る一篇あたりの苦労は、場合によっては変わらないのではないか。 その上、短編は短い時間で読み終えられる分だけ、「数」を求められる。 やみくもに量産すれば作家自身が消耗し、作品の質が落ちてしまう。 たくさんの人に喜ばれるが、読者層が広がれば広がるほど名声を得にくい。 ロジェ・グルニエ「チェーホフの感じ」にも、たしかそんなことが書いてあったな。 チェーホフはウィットに富んだ短編小説で圧倒的な人気を誇っていたけれど、自身のアイデンティティは短編小説家ではなく、劇作家・チェーホフだった。 夜は、花の名前を冠したフレンチレストランでお祝いの食事。 昼間の興奮さめやらず、短編小説やSFについて熱く語ってしまう。 最近、近所にオープンした小さなお店なのだけど、内装が白くて清潔、料理は彩りがきれいでおいしく、店員さんの接客もあたたかくて、とてもよかった。 家ウサギのローストと共に、ローヌ地方の赤ワインを1本空ける。 われわれの飲みっぷりを見ていたお店の人が、食後にグラッパをサービスしてくれた。 口に残る甘いソースの余韻と共に、ひと息で飲みほす。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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