596410 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

本読みのひとりごと

本読みのひとりごと

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

Profile

biscuit5750

biscuit5750

Comments

biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

Rakuten Card

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Category

2007.10.06
XML
カテゴリ:花嫁日記
出発の日。
朝、遅く目を覚ましたら父はもう出かけていて、携帯にメールが来ていた。

 気をつけて。くまくんにちゃんとあいさつしなさい。
 これから長い人生よろしく、とね

涙がこぼれないように、大きく深呼吸する。

午後、東京駅へ。母と妹が近所のバス停まで見送ってくれる。
泣きたくなると困るから、と東京駅までの見送りを断ったのに、新幹線に乗り込んだらやっぱり涙が止まらない。
電車が動き出してしばらく経ってから、崩れ落ちないように壁や背もたれにつかまって、ようやく指定されたシートに沈み込む。
ぬぐってもぬぐっても何かを洗うように流れてくるので、途中からあきらめて流れるままにする。
窓側の席をとってよかった。

泣きすぎて頭がぼうっとし、自分がどうして泣いていたのかも思い出せなくなって、ようやく涙が止まる。
そうこうするうち、あっという間に電車がわたしの新しい町に着き、扉が開いてホームへ吐き出される。
この電車は少し速く走りすぎる。こんな夜は特に。
ここへ来るときはいつも、ポケットに帰りの切符も持っていたけれど、今夜はない。
いま持っている片道切符を改札で手渡したら、わたしはもうどこへもゆかない、この町の人になる。

階段を一段ずつ、踏みしめてゆっくりとのぼる。
あと10段。5段。3段。あと、1段。

改札に迎えに来ていたくまが「よく来たね」と頷いて、わたしの大きなかばんを受け取ってくれる。違う温度の涙が、また流れてくる。
泣き腫らしたまぶたを、いい匂いのする秋の風がやさしく撫でて、通り過ぎてゆく。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.03.01 22:42:25
コメント(2) | コメントを書く
[花嫁日記] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X