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カテゴリ:読書日記
須賀敦子さん「遠い朝の本たち」を読む。 須賀さんと言えば、イタリアの風景や人びとを凛とした筆致で描いた「ミラノ 霧の風景」や「コルシア書店の仲間たち」、「トリエステの坂道」などが有名。 この本では、須賀さんが古今東西の本たちと過ごした豊かな時間が紹介されていて、ゆっくりページを繰っていると、それだけで心がパンケーキみたいにまあるくふくらんでくる。 それにしても、青春時代に手にした本から子供時代に妹や同級生とめくった本まで、内容のディテールから装丁、読んだときの心境まで、驚くほど詳細に書き込まれている。 幼いころから、本当に書物を愛していたのだな。1冊ずつ、刻みつけるようにしてていねいに読んできたんだ、きっと。 本の虫だったわたしも、少女時代にわりとたくさんの本を読んだつもりでいたけれど、今も詳しく覚えているのはほんの数冊にすぎない。 読書道にきびしい須賀さんのお父上に「そんなのは読書のうちに入らん!」と叱られてしまいそうだ。 それにしても須賀さんのつづる書評…というより、本にまつわるエッセイは、読書好きをいてもたってもいられない気持ちにさせる。 少し前に「本に読まれて」を読んだときも、須賀さんのすすめる本に片端から手を出して、タブッキやボウルズを読み漁った。 今回も、アン・モロウ・リンドバーグ「海からの贈物」が紹介されているのを見て、繰り返し読んだ本なのに、思わず手にとってしまった。 そしてもちろん、「海からの贈物」は知性と冒険の魅力に溢れたすばらしい本なので、部屋のあちこちに散らばった読みかけの本たちを放り出し、夢中で読みふける。 会社を辞めて結婚したいま、あらためて読み返すと、同じ本とは思えないほどたくさんの発見が。 こんなに大切なことを惜しげもなく後世の女性たちに教えてくれる、アン・リンドバーグは冒険家らしい、気前のいい女性だ。 こうやっていつまでも筋みちの通った読書ができず、本の海で溺れるうちに月日が流れてゆくのです。 溺れることがゆるされる日々は、それとしてとても幸せなのだけれど、もちろん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.12.06 15:47:08
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