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カテゴリ:読書日記
石田千のエッセイ集「しろい虹」読む。 石田千さんは俳人で、エッセイスト。 あわただしい日常の中で見逃されがちな、片目をつぶって考えずにすましてしまうような瞬間やものごとを選び、じーっと見つめてさっと書く、その筆はひと筆描きみたいに執着がすくない。 文章を書いていると、どうしても、「あれも書こう、これも入れよう」とずんずん膨らんでしまいがちだが、石田千さんはさすが俳人。 無駄な言葉を極力はぶいて、でも質感を損なわず、しみじみと行間を読ませる。 「しろい虹」も、その気になれば小一時間で読める文字数。けれどちゃんと味わって読むとけっこう時間がかかる。 石田千さんの文章が好きで、何年か前から新刊が出るたび楽しみに読んでいるが、ここにきてますます無駄がなくなり、切れ味のいい俳句に近づいてきたような気がする。 絵画の達人が、さまざまな技法をきわめ、ついに水墨画にたどり着くような感じかしら。 * 石田千さんを読むと、「踏切趣味」をおすすめして喜んでいただいた亡き文化的上司さまを思い出す。 思わずカーテンを開け、夕暮れの空に向かって話しかける。 お元気ですか。 わたしは元気です。 春がきました。 梅が散って、桜も散って、いまは桜桃の白い花が見わたすかぎり咲いています。 そちらはあたたかいですか。 しあわせですか。 わたしはしあわせです。 またいつか、お会いできるでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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