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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
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2008.05.09
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カテゴリ:読書日記
最近の読書。



田口ランディ「キュア」。
ランディさんの、今までの小説とは何だか質がちがうように感じた。
いちだんと地に足が着いて、地中深くまで太い根っこがのびた感じ。
「まるでSFを読んでいるみたいだなあ」と思い、「そうかSFなのか」と途中で気づく。
人間とガンの闘い。
医療。宗教。代替療法。電磁波を感知して執刀する外科医。手首を切る少女。病院で死ぬということ。
ランディさんの書きつづけているテーマのいくつかが、この小説に昇華しているという印象を受けた。
読みながら、胸のあたりがずきずきした。物語に感情移入して、というのではなく、物理的に痛かった。以前病気をしたときずっと苦しかった第4チャクラのあたりだ。
何度か深呼吸したら、ようやく少し楽になった。

読んでいる間、死はわたしのすぐ隣にあった。
ランディさんの文章は、弱虫のわたしがふだん避けて考えないようにしている問題を、容赦なく正面から突きつけてくる。
あなたはいつかこの世での生を終える。
それまでのかぎられた時間を、あなたはどう過ごす? 何をえらぶ?
どうやって、旅立つ?



ねじめ正一「荒地の恋」。
詩誌「荒地」の詩人北村太郎と、田村隆一。
北村が田村の妻、明子と道ならぬ恋に落ちるところから、物語がはじまる。
長い年月をかけ、「ことば」で結びついた北村と田村の関係は、女性問題ひとつですぱっと切れるようなものじゃない。

この小説を読みながら、田村隆一「詩人のノート」をめくってみたら、田村は北村について、こんなふうに書いていた。
「北村太郎とは因縁が深い。きわめて深い。このぶんでは、来世までつづきそうである」。

明子も巻き込んで三つ巴に絡み合い、本人たちもほどく術を知らないその複雑な関係。というより、北村と田村は、ほどく必要も感じていなかったのかもしれない。
ふたりの間で、ゆっくりと壊れてゆく明子の精神。
北村の最後の恋人。そして、驚きの結末。
最後まで息つく間もなく一気に読ませる。ねじめさんは、すごい。

それにしても携帯電話もパソコンのメールもない時代は、人間関係が閉じられた一対一でなく、ゆるやかにひらかれていたのだな、とあらためて思う。
電話は取り次がなければ話せない。
書き言葉で何かを伝えようと思えば、焦れる気持ちをおさえて手紙をしたため、返事を待つしかない。
親は子の、妻は夫の人間関係にぼんやり巻き込まれている。
言葉のやりとりに時間と手間がかかる。それはとりもなおさず、頭を冷やし客観的になるゆとりもあるということだ。
その大らかさと、閉塞。





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Last updated  2008.05.14 16:20:09
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