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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
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2008.05.30
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カテゴリ:読書日記
朝、曇っていたけれど少しずつ晴れてきた。
今日はアパートが断水になるので、朝から片づけものや洗濯を大急ぎでやる。
夕方には水が出るのに、何だか心配で、家中のタオルやTシャツをかき集めてきて全部洗う。
結局、いつもの倍も洗濯をした。
風がつよいから、すぐにかわくだろう。

 *

最近読んだ、本。



蜂飼耳「紅水晶」。詩人の短編小説集。
著者は詩人なので、すべての言葉が、収まるべき場所に収まっている。
むだな言葉、場ちがいな言葉がひとつも見あたらない。
じっと耳を澄まし、あらゆる色、音、におい、味、手ざわりをひとつもらさずていねいにすくいとる。
人間の観察日記みたいだ、と思ったり。

すべての行間には均質な静寂がある。
庭のししおどしに水がたまるのを待つ時間によく似た緊張感が、糸みたいに物語を貫いている。
同時に虫の羽音のような不協和音も、底の方でずっと鳴りつづけている。「ぶーん」とか「じー」とか。
「蜂」を「飼う」「耳」という名前のひとだものな。
読み終えて、あらためて表紙を眺め納得する。

作風も文体もテーマもまったく関係ないが、その「ブウン」という音で夢野久作を思い出した。奇作「ドグラ・マグラ」。

あんなに夢中になって、とりつかれたように本のページをめくったことは後にも先にも一度きりだが、そのくせこれほど人にすすめたくない本も珍しい。
書店でもしドグラ・マグラを手にとっている人がいたら、それ、読まないですむならそのほうがいいです、と耳うちしたいほどだ。

夢野久作を読むことを覚えたのは大学の教室だった。
文芸評論家で、音楽評論家でもある先生の講義で、週に一冊の課題図書を読み、勝手気ままに感想を言いあうというふしぎな授業だった。
先生が選んでくる課題図書がさらに奇妙で、川端康成なら「眠れる美女」、三島由紀夫にいたっては「憂国」の映画(三島由紀夫が原作、監督、脚本、主演すべてをひとりでこなし、延々とハラキリをつづける)を授業中に鑑賞した。
五時限目、西日の差し込む教室で、わたしたちはたしかに、何か奇妙で新しい価値観の種を植えつけられた。

あの場所で「紅水晶」を読みたかったな。
図書館のカウンターで返すとき、ふとそう思った。
ニヒルな先生は、集まっていた風変わりな文学青年たちは、どんな言葉で蜂飼耳を形容するだろう。





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Last updated  2008.05.30 12:51:03
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