|
カテゴリ:読書日記
林芙美子「放浪記」読む。 ふしぎな日記だ。 金がない、詩が売れない、腹がすいた、仕事が辛い、捨てた男が恋しい、母も恋しい、いっそ死にたい、さもなければ身売りしてしまおうか。 それらをみな一緒くたに、小気味よいリズムの文章と詩に巻き込んでしまう。 頽廃的なことばかり延々と書き連ねてあるのに、何だか軽妙なのだ。 たぶん、少女時代を過ごした尾道の海のように、根が明るいひとなんだろう。 そして腹の底には、赤いマグマをふつふつとたぎらせている。書きたい読みたい人恋しい。 だから文章が湿っぽくならない。どこか一点がすこんと抜けて、愚痴が愚痴に聞こえない。 平松洋子「おもたせ暦」。 「いただいたものを、その場で開ける。いただいた側が、その場でふるまう」のが、ただの手土産とひと味ちがう「おもたせ」の愉しみ。 そんな贈ってうれしいおもたせの数々が、日記ふうに、写真つきで紹介されている。 折詰の寿司に羊羹、といった王道から、タイ料理のレシピと一緒に材料を贈る、なんて変り種まで、その数50余。 これだけレパートリーがあれば、受けとる側はもちろん、手わたす側も飽きず楽しめるにちがいない。 ページをめくりながら、おなかがぐうぐう音を立てる。 * 東京へ行ったらこれも買ってみたいな、こっちはあのひとが喜びそう。 なんて思いながら読んでいたら、何だか東京が恋しくなった。 この本には「おもたせ」の紹介と共に、東京の町並みの描写もたくさん出てくるのです。 一度火がついたら矢も盾もたまらず、のどが渇いて水をのみたいような感じで、東京へ行きたい、とつよく思う。 目的なんて決めずに、ただぶらぶら町を歩きたい。 東京に住んでいたころは、ゆったり散歩しているつもりでも、いつも何となくそわそわしていて、ちっとも町歩きが上達しなかった。 田舎時間が体に染みこんだ今なら、もっと町歩きを楽しめるかしら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書日記] カテゴリの最新記事
|