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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
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2008.09.24
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カテゴリ:読書日記
よつば

温泉の帰りみち、石けんやらシャンプーを入れたお風呂かごを抱えて歩いていて、何気なくサンダルの足もとをみたら、でっかい四つ葉のクローバーと目が合った。
かがみこんで手にとる。
いくらか虫くいはあるけど、堂々とした立派な四つ葉。
クローバー畑で葉っぱをかき分けているときはちっとも見つからないのに、出会うときにはこうやって、突然目の前にあらわれるのだよな。四つ葉のふしぎ。
どこで押し葉にするかしばし書斎で迷い、広辞苑「クローバー」のページにはさんでおくことにした。
10年か20年先、あるいはわたしの子供や孫が、「黒髪」や「クレンザー」について調べたくなったとき、はらはらと舞い落ちてくるはずだ。



ジャネット・ウィンターソン「灯台守の話
「わたしたちの家は、崖の上に斜めに突き刺さって建っていた。椅子は残らず床に釘で打ちつけてあり、スパゲティを食べるなんて夢のまた夢だった」
最初のページでこの数行を目にすれば、斜めに傾いだ家のかたちを思い浮かべずにはいられない。
私生児として生まれ、すべり落ちないために母さんと体をひとつに結びつけて育ち、やがて灯台守見習いとなったシルバー。
灯台守のピューが夜ごと聞かせてくれるふしぎな物語の主人公、バベル・ダーク。
ふたつの人生が交錯し、物語にみちびかれて、シルバーは旅に出る。

風のひと吹きでちりぢり、ばらばらになってしまいそうな、あやうい物語の断片たち。
それでいて、夜の真ん中にそびえたつ灯台のような、強烈な求心力もある。
ふたつの相反する力をあやつり、ぎりぎりのラインで物語を成立させるバランス感覚において、ウィンターソンというひとはたぶん、天才なのだと思う。

「物語」という概念が、この小説のひとつの大きなテーマになっている。
かつて、地図の読めない海の男たちは、世界中にちらばる灯台を物語でおぼえた。
物語を語ることが、灯台守の大切な仕事だった。
やがて灯台は無人化され、物語は忘れられた。

ほんとうに? ほんとうに忘れられたんだろうか。
それは世界のどこか、バベル・ダークが見つけた岩の割れ目のような秘密の場所に、ひっそりと隠されているのかもしれない。
それを探しに出かけ、掘り出してメッセージを聴きとり、人びとが読むことのできる共通の記号、言葉に変換するのが、たとえばウィンターソンのような、作家の仕事なのかもしれない。

盲目の灯台守ピューのように、みえない目で、かたちのないものに光を与える。
物語は、パンや水のように、命をつなぐために必要なのではない。
それは、墨汁を流したような夜の海で旅をつづけるための、ささやかな目じるし、道しるべだ。





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Last updated  2008.09.24 12:43:28
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