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テーマ:絵が好きな人!?(4301)
カテゴリ:読書日記
郵便局へ行く途中、公園の散歩みちを通った。
午後の光がキラキラ降りそそぐ。 秋の虫にまざって、季節はずれの蝉が一匹鳴いている。わたしみたいな寝ぼすけだ。 風がふくと、バラバラどんぐりが降ってくる。 ゆだんしていると、人の頭もコツンとやられる。 トトロみたいだ、と思いながら拾って歩いていたら、ほんとうにトトロの歌が聞こえてきた。 見ると、学校帰りの小さな男の子ふたり。ランドセルを背負って、大きな声で歌っている。 ポニョじゃなくてトトロなところがかわいいな。 * TASCHENのアートブック「クロード・モネ」を妹に借りて読む。(見た、というべきか) モネの作品が年代別に並べられ、その人生が語られた大判の本。 こんにち日本や世界じゅうで愛されているモネも、晩年になるまでみとめられることがすくなく、貧しい時期が長かったのだと知る。 精神状態も常に良好とは言いがたいなか、リューマチを患ってもなお野外にイーゼルを立て、色彩ゆたかな画を描きつづけた。 風のつよい場所ではカンヴァスを岩にしばりつけ、一瞬の光、たちまち消えてしまうその印象を画のなかに閉じこめようとした。 ときには明日のパンのために、文字通り画を描きとばして、二束三文で売らなければならない時期もあったという。 けれどそれさえも、モネの画から光のみずみずしさを奪う理由にはならなかった。 多額の借金も、奥さんの長わずらいも、サロンでの落選も、批評家の酷評も、モネの手から絵筆をうばうことはなかった。 芸術家って「選ばれた」「特別な」人たちというイメージがあったけれど、どちらかと言えば「やめなかった人」ということなのかもしれないな、とページをめくりながら思った。 誰に何を言われても、向かい風が吹いても、貯金が底をついても手を止めず、ひとつのことをずっとつづけたら、それはきっと何かのかたちになる。ある程度の時間に耐えうるものなら、いつか誰かの心にひびく。ひょっとしたら、本人がこの世から旅立った後かもしれないけれど。 問題はその「ずっとつづける」という部分で、言うのはやさしいけれど、実際はたいへんなエネルギーを要する。 人からの評価というドラッグも、常に目の前にぶら下がっているだろう。 そんな困難と長年たたかいつづけたら、そりゃあ頑固になったり、古くからの自分のやり方にこだわったりするだろう。 だから芸術家の人生は波乱万丈だとか、天才は実生活の面で風変わりだとか、いろんなことが言われるのかもしれない。 なんてことを思いながら、大好きな「ヴェネチアのたそがれ」のページをひらいて、しばらく眺めてみる。 以前は、「虹いろの淡いひかり、きれいだなあ」と思うばかりだった。 けれど画家の人生にふれると、カンヴァスに向かう画家の後ろすがたがみえる気がして、見方が変わる。胸のあたりがきゅっと切なくなる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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