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カテゴリ:読書日記
冬にくらべると、春はどうしても読書のペースが落ちる。
外出が楽しいのはもちろんだけど、家の中を見まわしても、梅雨までにしておきたい仕事がたくさん! 家事の合間にようやく本を開いても、今度はうたたねが気持ちよくて…という具合。 じっくり読みたい本は、梅雨までおあずけかな。 …なーんて思っていたら、ひさびさに、めくるめく読書の快楽を味わえる本に出会ってしまいました。 それがこれ。 有川浩「図書館戦争」。 以前から気にかけていたのだけど、人気のある本なので、図書館の蔵書はいつも貸し出し中。 先日、ようやく順番が回ってきたのです。わくわく。 本を守るために、武器をとって戦う図書館員たちの物語…なんて、設定だけで本好きにはたまらない。 その上有川浩さんは稀代のストーリーテラーですから、読ませること読ませること。 この本のつづきが読みたい! どうしても! 今すぐに! 問答無用、ほとんど暴力的なほどの強い腕力で物語に引き込んでくれる本とすごす時間は、本当に幸せ。 「いけない、いけない…」と思いつつ、あらゆる家事を放り出し、ソファに沈みこんで読みに読む、背徳のひととき。 ほんのちょっと…のつもりで読みはじめたら止まらなくなり、さっきまで朝だったのに気づいたら夕方、という始末です。 著者はライトノベル作家なので、「図書館戦争」もラブコメ要素満載、ライトノベルの文法で書かれています。 (できれば一度、本屋さんか図書館で文体の好みを確かめてから手にとることをおすすめします) あまりの甘さに本を閉じてのたうち回り、ひとりで「ぎゃー」と奇声を発しては、ふたたびページを開いて読みすすめる…という繰り返し。 そして有川浩がおもしろいのは、ラブコメだけで終わらない、終わらせないところ。 「図書館の自由」宣言や、表現の自由。 現在の日本で暮らしていたらまず目に見えることはないそれらの概念を、目に見えるわかりやすい形にして、タブーなんかお構いなしでばっさりふたつに斬った上で、「ぽん」と読者の前に置いてしまう。 実際に起こった出来事、事件を下敷きにしたエピソードも随所に散りばめられていて、「こんなにはっきり書いてしまうのか!」とその勇気に思わず拍手したくなる。 肝っ玉の据わった書きぶりが、いっそ気持ちいいのです。 「図書館戦争」を読んでいると、有川浩というひとは、ライトノベルの文体を「えらんだ」作家なのだろうなあと思います。 そのかたちが、自分の表現したいものにいちばん合っている、もっとも多くの人に読んでもらえると知っていて。 純文学には純文学の、ミステリーにはミステリーの、SFにはSFの、ライトノベルにはライトノベルの文法があって、その優劣を論じるのはあまり意味がない。 「白いごはんを食べる人は、パンを食べる人よりえらいかどうか」という議論が不毛なのと同じ。 お店で手にとって、おいしそうなら、食べたければ食べる。そう思わなければ食べない。本って、それくらいの加減でいいんじゃないかなあ。 2冊の別冊をふくむシリーズ6作、げらげら笑いながら一気に読んでしまって、大好きになった登場人物たちと別れてひとりになったところでふとしんみりし、「わたしも強くなりたいなあ」などと思う。 守られるだけじゃなくて守ることのできる、相手がしんどいとき、寄りかかられてもこの足でしっかり踏んばって、ふたり分の重さを支えることができるような、そういう自分に。 閑話休題。 とにかく、自分にとって大切な人との関係を(恋人や夫婦にかぎらず、親子でも、兄弟でも友人でも)、あらためて結びなおしたくなる、今よりもっと大切にしたくなる本です。 エネルギーを充電したいとき、元気が欲しいときにもおすすめ。 「図書館戦争」以下、こういう順番↓で刊行されています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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