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カテゴリ:旅日記
松島へ。
計画ではとっくに梅雨が明けているはずだったのに、雨が降りやまない。 あざやかな色のパラソルをひらいたホテルのプールにも、かもめが一羽浮かんでいるきり、お客さんはいない。 わたしにきれいな海を見せようと、テラスのついた部屋を予約してくれたくまは、空を見上げてはため息をついている。 でも、白くて霧のかかったさみしい海が、わたしは案外好きなのだ。 霧のむこうをゆっくり動いてゆく光、あれは船? それとも燈台の灯りだろうか。 上野に鳩、奈良に鹿がいるように、松島にはかもめがたくさんいる。 テラスの屋根をかすめて、大きなかもめが飛んでゆく。 窓をあけたら、ばさばさと羽ばたく音まで聞こえた。 あまり期待せずに出かけたガラスの美術館が、思いのほかいい場所だった。 飾られているのは、おもに藤田喬平という作家の作品。 ヴェネツィアふうの花器や、和ふうの飾り箱。 ガラスのぶどうに、ガラスの睡蓮。 時間を忘れてうっとりと見入る。 館内は掃除が行きとどき、広さが十分にある。照明は明るすぎず、お客さんもあまり多くない。 何より、ひとつひとつの作品が、大切に扱われているのが気に入った。 海に面した展望室では、きれいなガラスの器で水出しのお茶ものませてくれる。 晴れた日に松島を訪れたら、きっとまた来よう。 円通院というお寺の庭が、とてもよかった。 こじんまりして、よく手入れがされていて。 あじさいの花びらに雨つぶがついて、宝石みたい。 くまと知り合って4年、結婚してもうすぐ2年、ふたりでいろんな景色を見た。 最初のうちは、なんでも言葉にして伝えないと不安だったけど、景色を見て心にわき起こる気持ちを何もかも共有する必要はないのだ、と最近は思うようになった。 ただ、だまって並んで同じ景色を見ることが、何十枚写真を撮って言葉を尽くすより、ずっと後まで心に残ってゆくことはたしかにある。 たっぷり温泉に入って、海の幸をたらふく食べて、充電完了! 明日からまた、日々の暮らしを照らす小さな燈台守の仕事に戻るのです。 守るべき場所をもつことの幸せよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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