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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:読書日記
すこし前ですが、仙台文学館に、井上ひさし展を見にゆきました。 (現在は会期を終了しています) 井上ひさしは個人的に思い入れのある作家で、彼の作品を読むと、すべての始まりだった高校の小さな図書室を思い出します。なつかしい。 * 仙台文学館は、車やバスもびゅんびゅん通る幹線道路ぞいにあって、着くまでは「いったいどんなさわがしい場所なのだろう…」と思うけれど、道案内にしたがって細いわき道へ入った瞬間、うそみたいにしんと静かになる。 緑に囲まれた、すてきな散歩道があらわれる。 その道をのぼってゆくと、こじんまりした森のコンサートホールみたいな建物があって、それが文学館。 ちなみに井上ひさしは、この文学館の初代館長でもあります。 だから…というわけではないだろうけど、展示も愛と親しみに満ちた、あたたかい雰囲気のものでした。 作品について解説してくれた若い女性の学芸員さんは、とてもかわいい感じの人で、ほんとうに嬉しそうに説明をしていて、本と作家への敬愛が全身からにじみ出ていた。 聞いているこちらが嬉しくなってしまうくらい。 展示は「吉里吉里人」の世界観を再現したものが中心。 展示スペースはけして広くないけれど、くすりと笑いたくなるような楽しい仕掛けがあちこちに。 ほかに心に残ったのは、戯曲の登場人物の年表。おどろくほど細かく几帳面な文字で、びっしり書きこまれている。 それから、栄養ドリンクの空き箱で作った紙人形(これを動かしながら戯曲を組み立てるんだそう。どこかストリップ劇場の看板を思わせるのは、たぶん、作家が浅草フランス座でキャリアをスタートさせたことと無関係じゃない)。 原稿用紙のます目にきっちりと収まった、意外に丸っこい万年筆の文字。 膨大な資料にあたり、手間ひまをかけてリアリティを追求し、一文字ずつ言葉を刻む。 「遅筆堂」なんて茶化しているけど、速く書けるはずないよなあ、これは。 ぎりぎりまで言葉ひとつもあきらめない、接続詞ひとつおろそかにしない、そういう姿勢で作品に向かったら、いくら時間があったって足りないに決まっている。 * 作家の頭のなかに広がる小宇宙を垣間みせてもらったような、満ち足りた気持ちで家路につく。 実はこの冒険にはつづきがあるのだけど、ずいぶん長くなってしまったのでまた明日。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.07 15:03:50
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