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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:読書日記
井上ひさしの脳内宇宙探検、2日目。 憧れの遅筆堂文庫をついに訪れる。 遅筆堂文庫は、小説家で劇作家の井上ひさし氏が、その蔵書約7万冊を故郷、山形県川西町に寄贈して設立された図書館。 その後も毎月のように寄贈がつづいて、現在では約22万冊の本が収められているとか。 わたしの住んでいるところから川西町は遠いので、なかなか機会を作れずにいたのだけど、最近、比較的行きやすい場所に、その分館(山形館)がオープンしたのです。 分館と言っても、「お母さんと子供のための本」が約3万冊、しかもオール開架! 貸し出しはできないけど閲覧は自由だというので、一日ゆっくり過ごすつもりで、朝早く出かける。 蔵王高原のふもと、洋菓子工場の敷地に作られた大きな建物の一角に、本棚がずらり。 ゆっくり閲覧できるように椅子やテーブルも用意されている。 平日だからか、館内には人影も少なくて、ほぼ貸切状態。 作家の書斎の一角をほんのひとときでもひとりじめできるなんて、なんという贅沢! 書架のあいだをくまなく歩き回ったあと、児童書の棚からじっくり見ていく。 さっそく、子供のころ夢中で読んだ「ねこになった少年」(征矢清著、岩波書店)に再会。 大人になってからも、この物語の強烈な印象が心に残っていて、あちこち探したけどすでに絶版になっていたのです。 こんなところで会えるなんて!と嬉しくなり、すぐそばの椅子に陣どって読みはじめる。 うーん、やっぱりおもしろい。 子供のころ心ひかれた本を読み返すことは、あのころの感受性をどれくらい守りきれているか、自分に問いなおすきっかけになる。 アーサー・ビナードの詩集をゆっくり味わい、「ユリイカ」のバックナンバーを手にとったら、赤鉛筆で線が引かれ、付箋が貼り付けられているページがあった。 本当に作家の蔵書なのだと実感して、思わず指で傍線をなぞる。 * 一見ばらばらにみえる知識や経験、無数の言葉が積み重なって熟成され、作家の頭のなかで化学反応が起こる。ひとつづきの作品になってペン先から流れだしてくる。 その化学反応の瞬間――火花が散ったり、発光したり、熱を帯びたり変色したりしている場面――を、一度でいい。この目で見てみたい。 そんなことは不可能だとわかっているんだけど。もちろん。 作家が手にした本をめくり、ガラスごしに直筆の原稿を眺めれば、その体温を感じることができるようで。魔法の名残に触れられる気がして。 わたしはたぶん、文学館や図書館に通うことをやめられないのだ。 * ちなみにこの図書館、2階の窓からの眺めがすばらしく、頬づえをついてぼんやりするにもぴったりの場所です。 同じ敷地内にレストランも、パン屋さんもあるから、おなかがすいてもだいじょうぶ。 また来たいというより、もういっそ住んでしまいたいような、本読みの天国です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.11 18:09:29
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