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カテゴリ:読書日記
干し終えたばかりの洗濯物を朝日に透かして見たら、 セーターの肩のところからもわーと白い湯気が上がっていた。 外気温はたぶん5度くらいしかないのに、太陽の力はすごい。 朝日にかがやく湯気のつぶがあまりきれいで、しばし見とれる。 佐藤初女さんの「こころ咲かせて」を読む。 この本を読んでから、おにぎりを作るひとときが魔法の時間になった。 お米がふっくら炊き上がったら、粗熱をとる。 やさしくお茶碗に盛ったら、あまり水を使わず、手に塩をつけてしばらく待って、出てきた水分でリズムよくにぎる。 熱いけれど、たなごころをきちんと使って、心をこめる。 (書きながら思ったけど、「たなごころ」っていい言葉だなあ!) そうすると、外はしっかり、中はふわっと、ごはんつぶがこわれずに、塩気がちょうどよく、時間が経ってもおいしいおにぎりができる。 何も言わず食卓に出してみる。 いつもどおり無言でほおばったくま、ふしぎそうに食べかけのおにぎりを見つめて、「何か変えた?」だって。 むふふ。魔法をかけたのよ。 青菜を茹でるときは、鍋に入れたら目をはなさず、そばについている。 じーっと見ていると、初女さんの言うとおり、青菜の色がぱっと鮮やかになる瞬間があるから、そこですばやく引き上げる。 今まで、茹でた青菜は何でもかんでも冷水でしめていたけれど、この方法だと、ざるにとってそのまま冷ましてもあまり色が褪せず、和えものにするときなど水っぽくならない。 歯ごたえと、野菜の香り、生命力がうしなわれずに、おいしくいただける。 初女さんは1921年に青森県で生まれ、岩木山の麓で、「森のイスキア」という場所をひらいている。 「イスキア」は、心が疲れた人がいつでも訪れて、初女さんが心と手間を込めたお食事をいただくことのできる、夢のような場所です。 キリスト教徒でもある初女さんの言葉は、その食卓と同じように、心をこめてひとつずつていねいにつづられていて、読みすすめるごとに心が透明になるような浄化力がある。 巻末におさめられた河合隼雄先生との対談も、大事なことが次から次へと惜しげもなく語られていて、しみじみといい。 実は何年も前から、この本はわが家の書棚にあって、けれど長いあいだ手にとらずにいた。 読み終えた今は、「もっと早く読んでおけば!」と思うけれど、わたしにとっては、今が初女さんの言葉に出会うタイミングだったのかもしれない。 心をこめて料理をすることの楽しさ、大切さを忘れそうになっていると気づいたら、何度でも手にして読み返したい一冊。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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