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カテゴリ:読書日記
どさどさと雪が降り積もったり、そうかと思えばあたたかい日がつづいてすっかり融けてしまったり、何だか妙な気候です。 完全な冬眠状態ではなくて、ときどき外を走ったりできるから、気が滅入らないのは有難い。 穂村弘対談集「どうして書くの?」を読む。 歌人の穂村弘が、高橋源一郎や川上弘美、山崎ナオコーラや一青窈など、もの書く人びとと対談しています。 対談相手に合わせて、ページの文字数や書体、レイアウトを変えているのが面白い。 「そうそう! 川上弘美を書体で表現すると、まさにこんな雰囲気!」と中身を読みはじめる前から楽しい。 何と言っても密度が濃いのは、高橋源一郎との対談。 近代と比べて現代の短歌が負けているのは、「感情の濃度」が違うから、というくだりにむむむと唸る。 竹西寛子との対談は、よく手入れされた日本庭園を眺めるよう。 『古今集』の、「四季の歌全部が贈答歌」という竹西氏の言葉には背すじがびりびりした。 宇宙からの呼びかけに、古代の歌人が歌で答えたのだと。 川上弘美の「書くっていう事が単純に編み物をするという感じの…」という発言も、後からじわじわ効いてきた。 そうか、川上弘美にとって、書くことは編み物だったのか。 穂村弘は、聞き手としての能力がすごく高い。 二言三言、言葉を交わしただけですっと相手にチューニングを合わせて(もちろん、事前の入念な準備があってのことだと思うけれど)、うなずきながら本質に近づいてゆくさまは、すごくためになる。 鋭利なカミソリを持っていなくとも、知識と理論で過剰に武装しなくても、「よく聴く」ことができれば豊かな会話ができる、という好例だと思う。 フィールドも、年代も言語感覚も異なる作家たちとの対談集だから、基本的には一話完結の短編集を読むような感じなのだが、その中でも、穂村弘はくり返し、現代の「死」の希薄さ、ということを言っている。 感情が薄くなり、死のリアリティーがなくなってきた時代に、言葉で表現をするということ。 その困難と最前線で向き合っているからこそ、穂村弘は作家たちに問いかけずにはいられないんだろうと思う。 あなたは、どうして書くの? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.01.24 09:45:09
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