595981 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

本読みのひとりごと

本読みのひとりごと

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

Profile

biscuit5750

biscuit5750

Comments

biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

Rakuten Card

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Category

2010.01.26
XML
カテゴリ:花と木、葉っぱ
おいしい湯気

1月25日発売の「暮しの手帖 44号」に、昨年投稿した小さな文章を載せていただきました。
やわらかい女性の声でお知らせの電話をもらったとき、自分でもちょっと意外なほど嬉しかった。
中ほどの「家庭学校」欄、「晴れの日の週末」というタイトルがついています。
もし書店で見かけたら、ページをめくってみてください。

 

いつの間にかずいぶん長く走れるようになったので、ひとりでは行ったことのない工業団地のほうまで、1時間ほどかけて足をのばしてみる。
工業団地と言っても、精密機械の組み立てや食料品の工場が多いようで、もくもくと煙を吐く煙突もなければ、大きな音もしない。
工場に用のある車しか通らないから、幅の広い道はとても静かで、排気ガスになやまされることもない。
工場の周りには、樹を植える決まりになっているのだろう。
どの通りにも、背の高い木々がよく手入れされて並んでいる。
今朝は、ユリノキの並木道を見つけた。

空高くまっすぐに育って、初夏にはチューリップに似た黄緑色の花をつけ、秋には大ぶりの葉を黄金色に染める、ユリノキは姿のいい、西洋の貴婦人みたいな木だ。
有名なところでは、上野の東京国立博物館の中庭に立派なユリノキが枝を広げている。
(だから国立博物館は「ユリノキの博物館」と呼ばれたりもする)

この季節、ユリノキの枝先には、花のかたちをした実が、天を仰いで並んでいる。
何とかして中をのぞいてみたいものだと思うが、彼らはたいてい高いところでつんと上を向いているから、その願いが叶うことはない。
花びらのような繭の中で、ユリノキの精がぐっすりと眠りこんで、春の夢をみている。

人が手間と時間をかけて守り育てた樹のそばにいるのが、とても好き。
彼らには、人と一緒に生きている自然だけがもつ、穏やかなたたずまいと包容力がある。
原始の森は絶え間ない生命の闘争の場だから、入ってゆくには覚悟と準備がいる。
日常の中で心に抱くのは、たとえば工業団地のユリノキのような、ありふれた一本の街路樹がいい。

歩くような速さでとことこ走りながら、そんなことを考えた。

ユリノキ(冬)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.01.26 06:47:10
コメント(8) | コメントを書く
[花と木、葉っぱ] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X