本読みのひとりごと
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biscuit5750
三度のメシと本と昼寝が好き。なbiscuitのひとりごとです。 夫と元気すぎる2人の息子と4人暮らし。
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先週の寒波はすごかった! 風が強くて気温も低くなると、雪は上からだけじゃなく、四方八方からびしびし吹きつけるのです。 家の中にいても、エアコンの送風口や台所の換気扇から吹雪が逆流して、「ごおお」とおそろしい音を立てる。 窓の外が真っ白で、文字通り何にも見えない。 ホワイトアウト…という言葉が頭をよぎる。 こんなときに外へ出て、遭難してしまうと大変なので、家の中でのんびりお菓子を焼いたり、手紙を書いたり。 何度か大雪が降ったおかげで、この冬はりんごのケーキとマドレーヌをマスターしました。 雪融けの休日、くまと、近所で評判のカフェレストランへ行く。 窓ぎわの席で、野菜たっぷりの前菜バイキングや、パリパリのピザ、もちもちのパスタなどをのんびり味わう。 キャラメル味のジェラートが絶品。 お料理もおいしいし、居心地のいい雰囲気なのでつい長居をして、他愛のないおしゃべりをしながら、ふとアリーおばさんのことを思い出す。 「思い出す」と言っても、じっさいに目を見つめて、言葉を交わしたことがあるわけじゃない。 わたしがアリーおばさんに出会ったのは、長田弘「本という不思議」という本の中。 そして詩人がアリーおばさんに出会ったのも、アパラチア山地の小さな書店で見つけた「アリーおばさん(Aunt Arie)」という本の中だった。 (楽天では売り切れのようです。amazonで古書の扱いがありました) アリーおばさんは、アメリカ、ノース・カロライナ州の山奥に暮らし、九十二歳で亡くなった。 水道もガスも、車もテレビも電話もない木の家に住んで、畑を耕し、鶏と豚を育て、生活のすべてを自分の手でまかなって生きた。 脳に傷を負い、ひとりでは日常生活を送ることができない母親のかたわらで三十年を過ごしたのち、三十八歳で、アリーおばさんは幼なじみのユリシーズと結婚する。 それからユリシーズが亡くなるまでの四十五年間を、ふたりは手作りの家で共に暮らす。 ……じぶんたちの力で暮らすのは、毎日毎日のたいへんな仕事をちゃんとできなければできないことだけど、でも、たいへんな仕事ほど楽しい仕事はないのですよ。ほんとうですよ。働くのがたいへんだったからこそ、私たちは毎日が楽しかった。いい暮らしというのはね、どんなにたいへんであっても、働くことが楽しい毎日のことですよ。ユリシーズと私は、このテーブルについて、椅子に座って、今日のじぶんの仕事のこと、そして今日見たこと感じたことを、毎夜、何時間も何時間も、おたがいに話して過ごしました。そのために、いつもいつもテーブルをきちんと整えるのが、わたしは好きでした。話すことがあって、話すひとがいる。それが私ののぞんだ、いい生活です。ユリシーズと私は、いい生活を共にしました。ユリシーズが亡くなってからは、周りのいろんなものが、私の毎日の話し相手。林檎もね、ブラックベリーもね、トウモロコシもね、みんな話すのですよ。ほらね。(何も聴こえないと言うと、断固として)、ちゃんと耳を澄まさなければ、だめ。 (長田弘「本という不思議」190ページ、みすず書房) 頭でっかちになっていると感じたら、本を取り出してこのページをひらくことにしている。 本当のおばあちゃんの家に帰ってきたみたいに、気持ちがすとんとまん中に戻る。地に足がつく感触を思い出す。 何千回も、何万回も一緒にごはんを食べて、見たこと聞いたことを飽きもせず話し合って、よぼよぼのおじいさんおばあさんになっても毎日が楽しいと言える、わたしもそんなふうに年をとりたい。 さて。 今夜は、何を作ろうかな。
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