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カテゴリ:読書日記
パン生地を発酵させるとき、ふだんは湯せんにかけるのだけど、ふと思い立って、ボウルごとこたつに入れてみた。 * 雪国は、春の気配。 雪国でむかえる、三度めの春。 二年前はちっちゃい双葉だったわたしの木、ゆっくり大きくなって、いつの間にか背たけと同じくらいの若木に育った。 ...なんて思っていたら、いくつかの条件がそろって、周りの世界がそろりと動きだす気配。 根っこに重心を置いたまま外へ広がってゆくことを、今年はためしてみたい。 永瀬清子詩集「あけがたにくる人よ」を読む。 谷川俊太郎が「今日のささやかな喜びが 明日への比喩となる 永瀬さんのちゃぶだい」とうたった永瀬清子さん。 永瀬さんは40歳で農業をはじめ、ご主人の定年後は自ら勤めにも出た。 「お百姓しているときには、ものを書く暇がなかろうと思っていたけれども、さっきも言ったように、うんと働いていると夜はかえってぐっすり眠れるわけね。そうすると短い時間寝て、目がぱっとはっきりあく。そういうことで、思っていなかったプラスがあったわけですね」 そうやって明け方に書き記された永瀬さんの言葉は、しっかりと地に足がついている。 表題作「あけがたにくる人よ」は、永瀬さん80歳の恋のうた。 あけがたにくる人よ わたしのような若輩者でも、胸にしんと響くものがある。 ご主人の死後に書かれた「黙っている人よ 藍色の靄よ」もいい。 悪い妻 心なしの私は 本書に収められているのではないが、もう少し早い時代に書かれた「だましてください言葉やさしく」も大好き。 だまして下さい言葉やさしく 妻として、農家の働き手として、勤め人として、どの役割もあきらめることなく、精力的に書きつづけた永瀬さんの根っこの思いは、本書のあとがきに垣間見ることができる。 「詩を書くことは自分を削りとる事です。(中略)身を削っても人に乗り移るほどのことを書きたい」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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