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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

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2010.02.27
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カテゴリ:読書日記

パン生地を発酵させるとき、ふだんは湯せんにかけるのだけど、ふと思い立って、ボウルごとこたつに入れてみた。
そうしたらこれが、大成功!
湯せんでやるより、ずっと早く均一にふくらむ。
いいこと発見しちゃった。

  *

雪国は、春の気配。
ベランダの雪もすっかり融けて、今年初めてこたつ布団と座布団を干しました。
こたつがお日さまのにおいになって、昼下がりにうとうと...いい気持ち。

雪国でむかえる、三度めの春。
あれほどこわがっていた車の運転にも、すっかり慣れた。
料理の本とにらめっこしなくても、冷蔵庫にあるもので、てきとうにごはんを作れるようになった。
近所に茶のみ友達もできた。

二年前はちっちゃい双葉だったわたしの木、ゆっくり大きくなって、いつの間にか背たけと同じくらいの若木に育った。
「ちゃんと育つかなあ」と不安になるときには、隣で自分の木を育てているくまが、水をやったり肥料を入れるのを、いつでも気前よく手伝ってくれた。
今までは根っこを張りめぐらすことに集中していたけれど、この春は、外の世界にも枝を広げてみようかな。

...なんて思っていたら、いくつかの条件がそろって、周りの世界がそろりと動きだす気配。
というよりも、わたしの気持ちが動いたから、車窓の景色が移り変わるみたいに、風景が動いて見えるんだろう。

根っこに重心を置いたまま外へ広がってゆくことを、今年はためしてみたい。
いいところも、だめなところもいっぱいある自分を、そのまま受けいれること。
感受性を守ることと、保守的になることは同じ意味じゃない。
心のロックを解除しても、根っこがあれば、自分を守ることができる。

永瀬清子詩集「あけがたにくる人よ」を読む。

このあいだの、吉野せいからの連想。
農業のかたわら書いた女性...と言えば、なんと言っても永瀬清子だ。

谷川俊太郎が「今日のささやかな喜びが 明日への比喩となる 永瀬さんのちゃぶだい」とうたった永瀬清子さん。
(詩集『夜のミッキー・マウス』に収められている「永瀬清子さんのちゃぶだい」より)

永瀬さんは40歳で農業をはじめ、ご主人の定年後は自ら勤めにも出た。
働きながら書くことについて、巻頭に収められた谷川氏との対談で、永瀬さんはこんなふうに話している。

お百姓しているときには、ものを書く暇がなかろうと思っていたけれども、さっきも言ったように、うんと働いていると夜はかえってぐっすり眠れるわけね。そうすると短い時間寝て、目がぱっとはっきりあく。そういうことで、思っていなかったプラスがあったわけですね

そうやって明け方に書き記された永瀬さんの言葉は、しっかりと地に足がついている。
味わうごとに、心がぴたりと中心に戻っていく。
決して難解でないが、まっすぐでつよい言葉だ。

表題作「あけがたにくる人よ」は、永瀬さん80歳の恋のうた。

あけがたにくる人よ
ててっぽっぽうの声のする方から
私の所へしずかにしずかにくる人よ
一生の山坂は蒼くたとえようもなくきびしく
私はいま老いてしまって
ほかの年よりと同じに
若かった日のことを千万遍恋うている

わたしのような若輩者でも、胸にしんと響くものがある。
10年、20年経って再読したら、またちがった表情に出会えるんだろうな。

ご主人の死後に書かれた「黙っている人よ 藍色の靄よ」もいい。

悪い妻 心なしの私は
できるだけあなたに尽したいとは思っても
つい遠い夢の方へ心がいったわ

本書に収められているのではないが、もう少し早い時代に書かれた「だましてください言葉やさしく」も大好き。
声に出して読むと、ぞくぞくする。

だまして下さい言葉やさしく
よろこばせて下さいあたたかい声で。
世慣れぬわたしの心いれをも
受けて下さい、ほめて下さい。
あああなたには誰よりもわたしが要ると
感謝のほほえみでだまして下さい。

妻として、農家の働き手として、勤め人として、どの役割もあきらめることなく、精力的に書きつづけた永瀬さんの根っこの思いは、本書のあとがきに垣間見ることができる。

詩を書くことは自分を削りとる事です。(中略)身を削っても人に乗り移るほどのことを書きたい






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Last updated  2010.02.27 07:59:34
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