596039 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

本読みのひとりごと

本読みのひとりごと

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

Profile

biscuit5750

biscuit5750

Comments

biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

Rakuten Card

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Category

2010.06.03
XML
カテゴリ:読書日記


杉崎恒夫さんの第二歌集「パン屋のパンセ」を読む。
(「崎」は右上が「立」)

杉崎さんのことは、友達が教えてくれた歌人・松村由利子さんのブログで知った。

  地下駅に季節がふいに目をさます「春は前駅をでました」
  星のかけらといわれるぼくがいつどこでかなしみなどを背負ったのだろう


ブログで紹介されていた歌を読んで「!」と思い、気になっていたところを、タイミングよく上京の折、書店でじっさいの本を手にとって見ることができた。

  どうしても消去できない悲しみの隠しファイルが一個あります
  灯台の白い破片が飛びちっているのではない風のかもめら

  
言葉も、世界観も、すべてが心地よいバランスの中におさまっている。
それでいて、無限の広がりがある。
ひとつひとつの歌から、風景と物語が立ち上がってくる。

長く国立天文台につとめた方なので、宇宙や星にかんする歌も多い。

  晴れ上がる銀河宇宙のさびしさはたましいを掛けておく釘がない
  ペルセウス流星群にのってくるあれは八月の精霊(しょうりょう)たちです


一冊の本を手に入れて、こんなに幸福な気分になったのは、久しぶりかもしれない。
本屋の外はつめたい雨が降っていたのに、本を入れた紙袋から、焼きたてのパンみたいなぬくもりが伝わってくる気がした。

  一番はじめに出会ったひとが好きになるペコちゃんだってかまわないもん
  こんがりと夕焼けベーカリーが焼きあげしクロワッサンを一つください


みずみずしくてお茶目なこれらの歌もすべて、70代、80代になってから詠まれたのだそう。

  それならば俺はどうなのだ詩人とは少年のままに老いてゆく人

あなたこそ、少年の心をそっと守りつづけた永遠の詩人の名にふさわしい方です、と空にむかってファンレターを飛ばしたい。
杉崎恒夫さんは2009年春、90歳でその生涯を閉じた。

  わが胸にぶつかりざまにJe(ジュ)とないた蝉はだれかのたましいかしら





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.06.03 10:28:07
コメント(0) | コメントを書く
[読書日記] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X