595967 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

本読みのひとりごと

本読みのひとりごと

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

Profile

biscuit5750

biscuit5750

Comments

biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
biscuit5750@ Re[3]:子どもを持つことの不自由と、自由(11/17) >バーソロミューさん お久しぶりです! …

Rakuten Card

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07

Category

2012.02.10
XML
カテゴリ:読書日記
蒼い朝

ちびくま、生まれて半年。
寝返りに加えてずりばいらしきものをマスターし、寝室に寝かせておいたのが、ごろごろずりずり移動して居間に顔を出していたりする。
支えてやればおすわりもできるし、わきの下を持ってひざの上に立たせると、足をぴんとのばしていっちょまえに立ってみせる。
手の届く場所にあるものは、何でもぎゅっとつかんで引っぱって口に入れようとする。
おもちゃやタオルはまあいいとして、母さんのほっぺたをつねり、父さんの上着のファスナーを引き下ろし、つかむものがないときは自分の足の指(!)までしゃぶっている。
毎日どんどん大きくなるのはとてもうれしくて、でも、きのうのちびくまにもう会えないことが少しさみしいような、ふしぎな気持ち。



長田弘「詩の樹の下で」を読む。

先月、ひさしぶりに上京する機会があり、30分だけ空いた時間で銀座の教文館に立ち寄った。
ゆっくり棚を見てまわる余裕はなかったけれど、ちびくまにお土産の絵本を一冊、そして自分には「詩の樹の下で」を買った。

この人の言葉が持つリズム、文章のたたずまいは、わたしをいつも、環境や心身の状態に左右されない、自分の中心に近い場所に連れていってくれるように感じる。
口ずさめば、今日という一日が、昨日と同じ繰り返しではないことを思い出す。
日々の暮らしの中に、窓を開けて新鮮な風を入れるような気持ちで、大事にページをめくる。

福島出身の詩人が、あの日のことを綴った「人はじぶんの名を」という文章があった。

「人はみずからその名を生きる存在なのである。
じぶんの名を取りもどすことができないかぎり、人は死ぬことができないのだ」


今は少し慣れたけれど、ちびくまが生まれてしばらくの間、誰かが息子の名を口にしたり、書類や郵便物に印刷されているのを見るたびにどきっとした。
名前を決めたのは、母親であるわたしと、父親のくまだ。
身ひとつで生まれてきたあたらしい人に、生涯口にし、何万回も呼ばれるであろう名前を贈る。
親になるということは、それほど重いことなのだと知った。

ル=グウィンの「ゲド戦記」でも、名前は重要な役割を果たす。
人、風、波、竜。
万物には真の名があり、その名を口にすることで、魔法使いは魔法を使うことができる。
反対に真の名を知られれば、かれの魔力はうしなわれ、丸裸で敵の前に立つことになる。
だから主人公ゲドも、ふだんは「ハイタカ」という通り名を名乗っている。
名を明かすことは、相手に自分の魂を託すことだ。

晴れ間

「詩の樹の下で」のなかに、「秘密の木」という詩があった。
息子が、自分の力で真の名を見つけ出せるほどに大きくなったら、この詩を贈りたいと思う。

「うつくしい大きな木が抱いている、この世でもっとも慕わしい、しかし、もっとも本質的な秘密。うつくしい大きな木のある場所が、小さな存在としての人の生きてきた場所なのだという秘密。」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.02.10 12:08:34
コメント(2) | コメントを書く
[読書日記] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X