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カテゴリ:花と木、葉っぱ
今年の桜。 雪国の桜は、まだつぼみもかたいだろうなあと思いながら、ベンチに座って満開の花を見上げていたら、「さくら、満開ですね。もう散っているかと思った」と声をかけられた。 見ると、隣にご婦人が座っている。大きな荷物を持っているので、「どちらからですか?」とたずねたら、なつかしい雪国の地名を。 「わたし、去年の夏までY市に住んでいたんです」と言ったら、「えっ!わたしW市です」とご婦人。YとWは、隣の町。 「W市の本屋さんが好きで、しょっちゅう通っていました」「わたしはY市のスーパーでいつも買い物しますよ」としばし地元トーク。 彼女のお孫さんと、うちのちびくま、同じ産婦人科生まれだったことが判明。 「広い世間で、こんなことってあるんですねえ」とご婦人。 春休みに、孫を連れて、息子さんの家に遊びにいく途中なんだとか。 しばらくお話したところで、夢中で電車の写真を撮っていた小学生くらいの男の子が走ってきた。 お孫さんに手を引かれて立ち上がりながら、「お話できて楽しかった。ありがとう」とご婦人。 「お会いできてうれしかったです。よい旅を」と見送ったあとも、なつかしい雪国の景色が心にうかんで、一日幸せな気持ちだった。 あの町で暮らした時間は、わたしの宝もの。 なつかしむ気持ちが桜に届いて、今日のひとときをプレゼントしてくれたんだと信じたい。 冬のあいだ、体調のわるさも手伝って、なんとなく心ぼそい気持ちだった。 雪国に帰りたい、都会は息がつまると泣きたくなる夜もあった。 だけど、このところ夢中で読んでいる荻原規子「RDG(レッドデータガール)」の6巻で、主人公泉水子がふるさとの山に帰郷する場面に行き当たり、ああ、いつでも帰れるんだと気がついた。 その場所はいつでも、わたしの中にある。 いつでも視界に入っていた、遠い山の稜線。 空をグラデーションに染める、美しい夕焼け。 さくらんぼの白い花。 勝手口を開けると入ってきた、緑の風のにおい。 週末ごとに通った店の、おいしいジェラート。 考えてみれば、雪国に引っ越したばかりの冬だって、わたしは心ぼそさで泣きそうだったのだ。 けれど5年をかけて、あの町はかけがえのない、もうひとつのふるさとになった。思い浮かべるだけで元気が出る、ゼロに戻れるような、大切な場所。 新しい町でも、時間と、それから手間をかけよう。 ここで暮らす日々が、ちびくまにとって楽しいものになるように。 ひとつずつ、自分のペースで、「わたしの場所」にしていこう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.04.07 00:11:12
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