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カテゴリ:読書日記
内田洋子『ジーノの家』読む。 イタリアでジャーナリストとして活躍する著者が綴る、10編のエッセイ。 どれもこれも、ため息が出るほどうまい。 そして最高にかっこいい! 上質な短編小説のような読後感。 イタリアを描いた日本の作家といえば、まず思い浮かぶのは須賀敦子。 須賀敦子のイタリアが、文学の香り漂う石畳の街並とすれば、 内田洋子のそれは、暗黒街ありファーストフード店ありの雑多な都会。 イタリアの今を生きる人びとの息づかいが伝わってくるような、生き生きした筆致だ。 特に心に残ったのは、著者が恩人の病気見舞いに訪れたナポリでの出会いを描いた「初めてで、最後のコーヒー」。 ゴミ回収業者のストで、街中ゴミの山と化したナポリに降り立った著者は、タクシー運転手に騙されかける。 けれどここからが内田さんのすごいところで、自分を騙そうとした運転手の心をつかみ、とっておきの場所へ案内してもらうのだ。 そしてこの短編の、ラスト五行が最高にかっこいいのです! 読み終えた後、しばらく動けなくて、本の間に指を挟んだまま、目を閉じてしばらく余韻に浸っていた。 小説よりも小説みたいな現実が、この世界には確かにあるのだ。 読書日記 ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.07 23:16:58
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