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2007.02.10
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カテゴリ:海外の小説
ダン・ブラウン
『デセプション・ポイント』
角川文庫


 

『ダビンチ・コード』のダン・ブラウンによる、ポリティカルサスペンス。

最近は、分厚い本は敬遠していたのだが、読み出したらとまらなくなり、一日で読んでしまった。
まず、上巻始めのマイクル・クライトンばり科学知識を散りばめたSF風の描写に引き込まれる。読み進めると今度は、政界の暗闘。NASAに多額の資金を注ぎ込む現職大統領を批判し、大統領選を優位に進める対立候補、機密保持問題を巡るNASAと国家情報局の対立、それぞれがそれぞれの思惑によって謀略を仕掛ける。権力・金・女といった野心のほかに、陰謀の裏にある、娘との確執を抱える父、娘を亡くした父、自身が仕える政治家への信頼と疑念の間でゆれる才色兼備の女性秘書などの人間模様が描かれる。また、視点人物をころころ変える手法で書かれているため、誰の視点から見るかで見えてくる光景は違ったものとなり、登場人物の疑心暗鬼がよくわかる。読者も誰が黒幕なのか、判断に苦しめられる。

最近、メディアから伝わってくるニュースはどれもこれも暗いものばかりである。多くの社会問題が山積し、解決の糸口も見えてこない。『ダビンチ・コード』などの陰謀モノが流行するのはおそらくそういった、人々の現状への不安や閉塞感があるからではないだろうか。多くの人は平凡な日常を望みながらも、大事件が起きるのを期待している。また、自分の知らない、より大きな存在に憧れる。それをかなえてくれるのが、この手の小説なのだ。
つまり、陰謀モノの魅力の本質は、見えている現実の裏側に知らない世界が広がっていることを知るということにある。目に見える現実の裏にある真実を知りたいという気持ちは、「目の前にある現実は真実ではない、もっと別の真実があるはずだ」という現実への不満がと表裏一体である。
もっとも先進国の人々は日常への不満も少ない上、宗教ウエイトもさほど大きくないため、『ダビンチ・コード』を読んだからといって、特段どうということはない。あくまで小説を小説として楽しむだけである。しかし、途上国においては、不満は大きく宗教の重要性も高いため『ダビンチ・コード』の与える衝撃は大きい。そのため『ダビンチコード』に対して、アジアや旧ソ連圏のキリスト教組織は激しく反発した。途上国のカトリック教会が動揺したのは、自分達が今日の問題にうまく対処できないとの自覚があったからではないだろうか。人々の現状への不満や苛立ちがあり、それを解決できないことに焦っているがゆえに、「事実を虚構と区別する必要がある」と声明を出したのだろう。
ちなみにこの『デセプション・ポイント』がアメリカで出版された2001年は、ブッシュとゴアが大接戦を繰り広げた年の翌年だ。時局便乗モノとまでは言わないが、現実のアメリカの選挙戦に疲れたアメリカ国民の受けを狙って書かれたと思って差し支えないだろう。実際の2000年の大統領選挙の争点と、小説の中の大統領選挙の争点は全然違う。人々が、せめて小説の中で、現実のアメリカが抱える問題を忘れて、善悪のはっきりした(ついでに勝敗もはっきりした)選挙戦を楽しみたいと思うのは自然なことだろう。





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Last updated  2012.04.11 18:17:26
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