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ボロ邸生活日記

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伊倉

伊倉

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2006.11.25
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裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その1
裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その2
裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その3
裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その4

 種が解れば、どんな魔法も驚きを失う。

 何と言う事は無い。

 神の役を演じていたのは猫耳を遺伝子操作で作ってしまったあの科学者で、
黙示録の破壊は、有機生命体兵器を大量に投入しただけのただの戦争だった。

 地上は未だに化け物共が闊歩し、殆どの人類はジオフロントへの避難を余儀なくされているが、
俺の生活は今までとほとんど変わっていない。

 違うのはたまにタバコ代と生活費のために働く事と、青い空を見られなくなった事。

 そして、同じ家で過ごす人を失った事だけだ。

 「だけ」、と誤魔化そうとしても、実際には恵と居られない事がどんなに自分を無気力にしているか、
嫌と言うほどわかっている。

 今はもう、煙草も美味く感じられない。


 「そこの青年、ちょっといいかな」

 人に話しかけられるのは久しぶりだ。

 気が付けば、あれから三年も経っていた。

 日付を認識する事すら忘れるほど、俺は気力を無くしていたらしい。

 「何か、用があるのか」

 目を開けると、ドーム天井の光が眼を眩ませた。

 どうやら既に午前が終わろうとしているらしい。

 昼間の光度に調整されたジオフロントの天蓋のライトが、俺と話しかけてきた人物を照らしている。

 「久しぶりに『火花』を持つ者を見つけたのでな、誘いに来た」

 その人物は、黒いローブを纏った爺さんだった。

 白い髭と併せて、何やら既視感を覚える格好だ。

 「火花?誘い?何の事だ、爺さん」

 「ふむ、わかりやすく言うとだな。君には、魔術の才能がある」

 既視感の正体がわかった。

 あまりにも、この爺さんは魔法使いのステレオタイプなんだ。

 どうにも胡散臭いが、その言葉もどこかで聞いたような内容だった。

 「魔術、才能、か。そんなものが本当にあれば、今頃は――」

 ――だめだ。今の俺はどんな考えも後悔に繋がってしまうらしい。

 「そんな夢みたいな希望、俺に見せないでくれ」

 いくら胡散臭いファンタジーでも、今の俺は受け入れてしまいそうなほどに弱い。

 希望を見てから、それがまやかしであった事に気づく事の怖さを知っているというのに。

 「少し目を瞑りなさい」

 「……こうか?」

 直後、俺は足場を失ったのを感じた。

 どこまでも落ちていくような感覚。

 しかし実際は数秒も続いてはおらず、何をされたのかと確認の為に目を開けた時には既に終わっていた。

 「おい、一体何した……?」

 言いかけて、言葉を失う。

 目の前の光景は、さっきまでいたはずの無機質なジオフロントではなかった。

 瓦の屋根が混じる町並み。

 山と海に囲まれたその街は、どこか見覚えのある風景だった。

 「ここは、日本なのか?」

 しかし、そんなものはもう存在しないはずだ。

 「化け物は?天使はどうした?こんなきれいに残ってる街が、まだ地球にあるってのか?」

 老人は、静かに首を振った。

 「地球の都市はどこも廃墟だよ。しかし、ここは間違いなく日本だ。君の知る『日本』じゃないがね」

 「まさか。異次元だとでも言うのか?」

 「勘がいいな。そう、異次元と言っていいだろう」

 そんな話があるか。

 しかし、この光景を見せつけられて跳ね除けられるほど、やっぱり俺は強くない。

 「本当に――魔術なんだな」

 「そうだ」

 「俺に才能があるって言ったな。アンタが教えてくれるって言うのか?」

 「そのつもりだが。困った事に、既に一人居る弟子で手一杯でな」

 何だよ。

 期待させておいて、それは無いんじゃないか。

 「まあ怒るな。今の弟子が一人前になったら、弟子にしてやるとも。それまでは、そうだな」

 老人は、街の中程の丘に立つ城を指差した。

 「丁度良い事にな、魔術の基礎を教える学校があそこにある」

 「学校ねえ」

 それも、いいか。

 本当に魔術なんてモノがあるのなら、それに可能性を賭けるのも、悪く無い。

 「話に乗るよ、爺さん」

 考えてみれば、生まれてから初めて目標が出来たんだな。

 それを達成して、俺が失ったものが取り戻せるかはわからないが、
可能性があるのに諦めるのは、もうやめだ。

 「魔術の限界、見てやるよ」


 灰色の地下都市から、一人の男が消えた。

 それを気にする者は誰一人としていないだろうが、そいつが帰ってきた時、きっと何かが変わる。


To be continued toBWA





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Last updated  2006.11.26 01:23:46
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