●●●本との巡り合い●●●
いつもどうも決まった作家や馴染みのある作家しか手に取らない。本棚にあるものも、いつもとあまり変わり映えしない。書評を読むけど、手に取っても買って読むまでにはいたらない。先日偶然、図書館で日本語の本のセールをやっていたので、山のように単行本を買ってきた。その中には当然、全然聞いたこともないような人も。なんでNYの図書館にあったのかはわからないが、でも、でも、読み終えて当たりだったんだなあ。ちなみに、その中の3冊をあげてみると、●岡本太郎著『自分の中に毒を持て』●津田晴美著『小さな生活』●パトリス・ジュリアン『いんげん豆がおしえてくれたこと』このごろ岡本太郎さんの作品は『開運!なんでも鑑定団』で目にする機会が多い。しかも、どれも破格の値段が付いている。私が知っているのは東京オリンピックの『太陽の塔』だけだけど、それ以外にも角がたくさん生えた寺の鐘とか、手のひらの形をした椅子だとか、作品自体が思いっきり主張しているものが多い。本の中でもおおいに考えさせられた。「みんなどうしても、安全な道の方を探りたがるものだけれど、それがだめなんだ。人間、自分を大切にして、安全を望むんだったら、何も出来なくなってしまう。計算づくでない人生を体験することだ。ぼくは、ほんとうに自分を貫くために、人に好かれない絵を描き、発言し続けてきた。一度でいいから思い切って、ぼくと同じにだめになる方、マイナスの方の道を選ぼう、と決意してみるといい。そうすれば、必ず自分自身がワァーッともり上がってくるにちがいない。それが生きるパッションなんだ。」(原文まま)2番目の津田晴美さんは私は全然知らなかったんだけど、インテリアや暮らしに関してのエキスパートらしい。インテリア好きにはもってこいのエッセーだった。「人がよりよい暮らしをしたいと思うのもおしゃれしたいと思うのも、何がいい暮らしでどのようによく見せたいかは人それぞれ違うとしても、その動機は自分がその形にふさわしい中身になりたいと思うからだろう。だから、そんなことをいつもあれこれ考えている人の方が考えない人よりも、私には百倍も魅力的に見える。」(原文まま)3番目の人は料理本も出している人で、外国人の目から見た日本を的確に辛辣に書いている。ページが黄緑と白が交互にあって、ところどころのイラストもかわいい。「どうすればそんなにたくさんのことができるのかとよく人から尋ねられる。実はこれはテクニックの問題ではなくて、内面の姿勢の問題なのです。僕の内面の姿勢は、マンネリや習慣からくる安心はなにがなんでも避ける、ということが基本になっている。」(原文まま)この3冊はちょっと丁寧に生きるためのヒント。なにげなく時間が流れて行く中で意識が向上させられる。たとえば毎日毎日同じ朝食を惰性で取っているとその中にあるパンの味もしなくなってくる。紅茶も色のついた飲み物というだけで、深い味わいもない。でもちょっと明日の朝食には心を込めて紅茶を入てみようと思えば、味も変わるかもしれない。なにげないことだけど、少し意識を変えるだけで何かが変わる。その小さな毎日の積み重ねで、いつのまにか大きなものが動いているかもしれない。心の内側でこういう本を求めていたのかもと思えるほど、どんぴしゃりの本だった。本との巡り合いも運命なのかな~。