●●●母の逆武勇伝●●●
年老いた両親を日本に残して、海外で暮らしていると何が心配かといって、一に悪徳商法、二に病気、三に火事、四にどろぼう、五に事故ぐらいだろうか。特に一の悪徳商法は、壷、印鑑、宝石・・・と、これまで順序よくだまされてきた母。そのだまされやすい性格をよく知っている私は、母からかかってきた電話に「今だまされてないか?」「高額商品こうてないか?」と問わずにはいられない。まだ、私が高校生のころ、弟がグレてどうしょうもなかったころ、それはうちの実印が悪いからだといわれ、印鑑を買わされた。(普通はこんなこと信じないはずだけど、普通の精神状態ではない母はいわれるままだった)母はもう亡くなった祖母にお金を借りて30万円を払った。むこうも用心深く3ヶ月ぐたいたたないと効果は現れないので、その間はだれにも言ってはいけないと口止めされた。その直後に母は壷も同じ人から買った。気づいたときにはあとの祭り。宝石はつい最近のことである。まずは訪問販売で顔見知りになる。そこではあまり商品をすすめない。家に上がりこんでお茶を飲む程度である。しかし、だんだん友達のような関係になる。ついでにというように今度集まりがあるあらおいでと誘う。(なんの集まりかはいわない)出かけていった母はそこで、宝石を見せられる。断ることができない母は高額な宝石を買わされる。金額はおそろしくていえません。今も年金でほそぼそと払い続けています。こんなこともあった。検査商法である。壁がはがれているので、早めに塗りなおした方がいいという。この際だから家全部塗り直すことをすすめられる。そして他社に見積もりもとるひまもあたえず、いいくるめられてしまう。あれよあれよと契約させられる。この間日本に帰ったときは、Q●Cという通販番組にはまっていた母。24時間、絶え間なく新商品が紹介され、まるで催眠術にでもかかったように、その商品が欲しくて欲しくてたまらなくなるそうだ。「本当に欲しいのかどうか一日よく考えてから注文すること」と、厳しくいいつけておいたが、さみしさを紛らわせる効用もあるようで、だれかが届けてくれることがうれしいらしい。本当に欲しいのかどうかわからずに買った品物はタンスの奥の方にしまわれる。この間、物置の整理をしていたら、新品の便座カバーが10枚も見つかった。「あんたどんだけカバーかえるねん」どうしたことだろう・・・。おれおれ詐欺だけはまだだいじょうぶみたいだが、油断したときが一番あぶない。本当にこまった母である。