週刊メルマガ「強引ぐ マイ ウェイ」vol. 43 バックナンバー公開
2005年8月30発行号公開アーティスト・ブルーシャ西村のエッセイ「強引ぐ マイ ウェイ」 vol. 43 8/30/05 (火) 発行 皆様、こんにちは。お元気ですか? ニューヨークは、少し涼しくなったと思ったら、また蒸し暑くなってきて、ここ数日間は過ごしにくい日が続いています。日本はいかがでしょうか? 28日には、リンカーンセンター・アウト・オブ・ドアーズという無料のコンサートのフェスティバルで、ジャズ・ボーカリストのディー・ディー・ブリッジウォーターのライヴがあったので、行ってきました。グラミー賞を2回受賞した方です。アメリカ人の友人で、彼女の大ファンの人がいるので、初めて観に行きました。正真正銘の正統派ジャズヴォーカルでしたね。 自分で作った曲は全くなくて、誰かの曲や、スタンダードのジャズ曲オンリーのステージでした。選曲は凝っていたものもあり、満足できました。私の好きなパーカッショニストのモンゴ・サンタマリーアの「アフロ・ブルー」や、ブラジリアンの、ミルトン・ナシメントやバーデン・パウエルの曲も歌っていました。これは、カッコ良かったです!しかしっっ、「ベサ・メ・ムーチョ」を歌いだした時は、一緒に観に行った連れと顔を見合わせて、「か、帰ろーか・・・・」とつぶやきながら、曲が終わるのを我慢していました。彼女のおしゃべりはとっても面白くて、いかにも大阪にいそうなおばちゃんだったので、このキャラで、人気があるのかなと思いました。 楽しませていただきましたが、私はどうも、もっとオリジナリティーの強い、個性的なジャズの方が好きみたいです。その人が作曲した曲を聴きたいし、演奏の仕方も下手でもいいので独特なその人のカラーが出ているものの方が好きです。 尊敬するプロデューサー&ミュージシャンのアル・クーパーも、演奏は上手ではないのに、味があって個性的だし。先日書いた、ドクター・ジョンも、技術的には上手っていうわけでもないのに、濃い味とコクがあるのです。技術も大事ですが、芸術は、技術だけではなく、アーティスト独特のカラーと、他の人がまねできないオリジナリティーが強烈にあるもののほうが大切だと思います。もちろん、プロとしての最低限の技術はあって当たり前です。一番の理想は、技術とオリジナリティーとの両方が備わったアーティストですね。それに、ソウル(ハート)が加われば、最高ですね。演奏家と、作曲家(アーティスト)は、別のものなのですね。「レコーディング終了」2 さて、前回の続きです。七福神の音楽のレコーディングが無事に終了して2週間がたち、ようやく落ち着いてきました。今後のほうが、まだまだやることがあって、大変そうです。ぼちぼちこなします。 少しずつ、メルマガで、参加してくださったミュージシャンの紹介をしていきたいと思います。*人生で一番嬉しかったこと 今回の録音では、私が超大ファンであるギタリストの、ビル・ペリーが参加してくださいました。世界的に著名なブルース・ギタリストで、アメリカ国内よりもヨーロッパで人気があり、毎年ヨーロッパツアーに行っています。ドイツ、フランス、イギリスで大人気です。様々なブルース・フェスティバルには、必ずといっていいほど出演しています。 彼のギターは語っているし、歌っているし、細かいコントロールが完璧で、シビレます。オトコらしい! 濃いコクと味があって、素晴らしい! 世界最高のギタリストのうちの一人だと思います。本来なら、もっと有名になってもいいくらいのアーティストです。彼は、黒人とネイティブ・アメリカンの血を引いているので、とてもエキゾチックです。声もしゃがれ声で、渋い! 3年前くらいからニューヨークで時々お会いしたことがあったご縁で、今回の録音参加もお願いして、デモテープを送りました。彼も、他のミュージシャン達と同様に、私の曲をとても気に入ってくださって、すぐに参加の承諾をいただくことができました。彼は成功している世界的なミュージシャンなのに、私のような無名の新人の、しかもファーストアルバムに参加してくださるなんて、信じられないことでした。非常にオープンですね。その人が新人であろうが、今までの経歴がどうであろうが、出てきた作品が素晴らしければ、認めてくださるのですね。結果重視の実力社会の、アメリカらしい懐の広さを実感しました。 ビル・ペリーが参加してくださるなんて、私にとっても周りの友人たちにとっても、あまりにも信じられないことだったので、録音当日まで、「本当に来てくださるのだろうか、やっぱり用事があるといって来てくれないこともあるのではないだろうか」なんて心配していたほどです。私自身も、「本当かなあ、キツネにつままれたみたいだなあ」と実感がありませんでした。 録音当日、彼は、録音の2時間前までには来てくださって、準備万端、整えてくださっていました。プロですね。真剣に取り組んでいる姿勢が感じられます。 録音がスタートして、ノリノリで演奏している彼の姿を見ると、「ああ、自分の曲を弾いてくれているなんて、夢みたいだな」としみじみ思いました。私は小さなパーカッションを色々持ち替えて演奏に加わっていましたが、彼と目が合うと、にっこり微笑んで楽しそうに演奏してくださっていました。 私は、大勢で演奏して作品を作り上げる楽しさを、人生で初めて味わいました。音楽っていいですね。音楽は、自分一人だけの力では決して出来ないものだし、何人かのミュージシャン達と共同作業で作り上げていくものなので、とても楽しいことです。一人だけで作り上げる文章や絵画と違って、何人かで作り上げる音楽は、その分、感動も大きかったです。今回は、私が企画してミュージシャンを集めて録音を実現させたので、この音楽は、会社組織を運営するのに似ていると思います。自分ひとりでは出来ない作業や技術を、他の人々のスキルや協力を結集させて形にしていくことだからです。ミュージシャンは全部で8人を使ったので、私一人では出来ない演奏とハーモニーを実現させることが出来ました。8人の力は、大きいです。1人では、何も出来ませんよね。私がコンピューターで作ったデモテープでは実現不可能な、素晴らしい音になりました。 休憩時間に、録音したての音楽をみんなで試聴していたとき、ビル・ペリーは、私に、“ I like your music very much! ” と言ったので、“ Really? ”と私が聞き返すと、“ Yes, Very much! ”と答えて、ニコニコ微笑んでいました。信じられません。自分の耳と目を疑いました。嬉しくて嬉しくて、たまりませんでした。これは、私の今までの人生で、一番嬉しかったことです。「特に、ブルースのジャム・セッションの曲が好き。あんなメロディーは、僕たちは演奏しないよ。僕たちとは全然違うね。ものすごく個性的で面白いし、美しいメロディーでクールだよ」と彼は言うので、「あれは、あなたのために用意した曲なのです。あなたは素晴らしいブルース・ギタリストだから、あなたの良さを引き出すために、1曲だけ、ブルースのコード進行で、曲を作りました。コードにあてはめたら、自然に聴こえてきた曲なのです。」と私が説明すると、彼はうなずいて、ニコニコ微笑んでいました。 彼に得意のギターを弾いてもらうために、彼のために1曲だけブルース調の曲を用意しましたが、それは、七福神が送ってきたのかどうだか分かりませんが、コード進行を決めて、キーボードを弾きながら曲を探っていた時に、聴こえてきた音楽です。その良さを彼に分かっていただけたので、嬉しかったです。この曲は、他のミュージシャンにも同じような事を言われました。「あんなブルースの曲は聴いたことがないよ。変わっているし、僕たちとは全然違うね。個性的だよ。違うんだけど、キマッているんだよ。クールだよ。面白い」などど言うので、そんなにほめられたら、何かボケをつくろうとしてしまう関西人のクセで、「ああ、それは、私が、ブルースのことを全然よく分かっていないから、作ろうと思ってもブルースにならないんですよ。分からないから、自分の好きなようにしか作れないんです。だから個性的な曲になったんじゃないかな? それに、私が作っている曲じゃなくて、宇宙から聴こえてくる曲だから、聴いたことがなくて当たり前ですよ!(笑)」なんて私がボケると、「その通りだねえ、あんたはジェニュイン(本物)だよ」と納得していましたねえ。ビル・ペリーに、「次回録音する時も、ぜひお願いします!」と頼むと、「もちろん!」と答えてくださいました。「次は、あなたのコーラスかヴォーカルも少し入れたいです。今回は歌ナシになったけれど。」と言うと、「はい、もちろん!」と喜んでくださいました。無口な人のようです。 ほんとに、こんなに素晴らしい、私が大ファンのギタリストに録音を参加していただけて、その上、作品を気に入っていただけて、これ以上嬉しいことはないくらい、幸せです。自分がいいと思ったミュージシャン達と録音を実現させることが出来て、満足しています。私本人が、いいと思ったもの、素晴らしい録音を、レコードにして販売するので、お客様に対していいものを提供できることを幸せに感じています。 続きはまた次回!