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カテゴリ:芸術活動について
2005年9月21日号 公開
アーティスト・ブルーシャ西村のエッセイ 「強引ぐ マイ ウェイ」 vol. 46 9/21/05 (水) 発行 皆様、こんにちは。お元気ですか? 私は、最近は特に、新しい面白い人々との出会いが急速に増えて、エキサイティングな日々になってきました。毎日忙しいですが、楽しいです。 私は、ニューヨークに来て以来、日本のメディアでライターの仕事もしていることもあり、今まではずっと行動半径が狭くて、身の周りの日本人達と関わることが多かったのです。 それが、七福神の音楽の録音がきっかけで、ミュージシャンが私以外全員アメリカ人ということで、そこからアメリカ人の友人達が増えています。私の身の周りが、今までとは打って変わって、急激に国際的になってきました。 七福神が、 「あなたはニューヨークで、日本人とだけつるんでいてはいけません。ヒントは多様性です。行動半径をもっと広げなさい」 というメッセージを私に送ってきていたので、だんだんそのように、私の日常が変化してきているのだと思います。 今日は、アメリカ人について気づいたことを書きます。日本人とアメリカ人の表現の違いについて。比較文化ですね。 このメッセージは、ぜひ日本にいる若い人達、特に20代前半までの人々に向かって送りたいです。彼らは日本で縮こまらないで、伸び伸びとしてほしいし、それぞれの才能や能力を伸ばしていってほしいです。 「ニューヨーク育ちのアメリカ人F」 * スペインとアメリカの省エネさ スペイン人はとてもストレートで、本音と建前とか、裏表が無くて友達付き合いがとても楽でしたが、アメリカ人もそうですね。少なくとも、私の周りにいるアメリカ人達は、とてもストレートにはっきり物を言います。彼らは、「こう言ったら嫌われる」とか考えずに、率直に物を言ってくれます。考えていることと言っていることが、一致しています。ですから、お互いに信用できるいい友人関係を築くことができます。これは、日本から出て気づいたことですが、海外では友達付き合いの基本ですね。友達かそうでないかの違いは、考えていることと言っていることが一致しているかどうかが、大きな要因になります。 私にとっては、このようなスペインやアメリカの、ストレートに物を言い合える風土のほうが、とても合っていることに気づいて、伸び伸びと生活することができました。 「伸び伸び」するということは、「余計なことに気を使わなくていい」ということなので、「自分のエネルギーを余計なことに使う必要が無い」ということです。この環境は、私にとって、とても「省エネ」でした。省エネのお陰で、伸び伸びして、勉強に打ち込むことができたし、自分の才能と能力を思う存分伸ばすことに集中できました。人に気を使わせない風土のスペインを留学先に選んで、とてもよかったです。 スペインだけでなく、アメリカも、人に気を使わせない風土で、省エネです。よく考えたら、ヨーロッパやアメリカのほうが日本よりも大きいので、世界的に観れば、日本の「本音と建前」の人に気を使わせる風土のほうが、特殊です。各人の才能や能力を存分に伸ばすという点で観れば、日本のこの風土は、マイナスに働きます。本音と建前を常に考えて、周りに波風を立てないように気を使い続けていることは、自分のエネルギーをその分無駄に使っていることなので、才能を伸ばすことにエネルギーを集中できないということになります。 人間のエネルギーには限りがあるので、一生を長いスパンで見れば、若いうちにできるだけ才能と能力を伸ばすことに集中して、ゆるぎない土台を作ってから活躍するようにするのがいいと思います。ちまちまと、「周りに出遅れたらまずい」なんて考えてあせらずに、伸び伸びと能力を伸ばしてください。何の分野でもいいので、ゆるぎなく自分の才能を伸ばして築いたら、アメリカやヨーロッパでは、自然に活躍のフィールドが広がります。あせる必要はありません。 勉強期間は長ければ長いほどいいです。ヨーロッパは貴族階級社会ですが、貴族の子息は、35歳くらいまではずっと勉強を続けて、世界中を留学して歩きます。人間の教育に一番投資するのです。そして、35歳以降になってからぼちぼち、「思う存分勉強したから、そろそろ、何か働き始めようかなあ」と彼らは考え始めます。伸び伸びとして、ゆるぎない何かの能力を確立してからのほうが、その後、活躍のフィールドが広がっています。驚きですね。貴族の友人ができて、この風習を知った時、「ああ、まだまだ日本は豊かな国ではないのだな。若者に余分なエネルギーを消耗させて、縮こまらせて、才能を伸ばさせない国なんだな」とつくづく思いました。 今後は、20代前半までの若い人々に、ぜひこれを伝えていきたいです。彼ら若い人々は、これからの日本を背負っていると思うので、彼らに、できるだけ、伸び伸びと周りを気にせずに才能と能力を伸ばして欲しいと願っています。日本のほうが特殊なのだから、日本にいて周りに気を使ってエネルギーを消耗して縮こまっているのなら、思い切ってヨーロッパやアメリカに来て、率直にどんどん現地の人々の中へ入って行って、各自の才能を伸ばして欲しいです。 * アメリカで対等に仲間に入れてもらうには 私は日本生まれで日本育ちなので、日本にいた頃は、日本人の「本音と建前」の裏表のあるところは、「周りと波風立てないようにするための、大人としての仕方がないエチケット」なのだろうなと思っていました。皆、無意識のレベルまで、「本音と建前」が染み付いてしまっている人が多いですよね。条件反射のように、いつもそうやってしまうのです。しかし、「本音と建前」が常にあるということは、「考えていることと反対のことを言っている」ということなので、つまり、「ウソつきである」とも言えるので、よく考えると、「信用できない奴だ」ということになります。 これを、このまま、よく考えないで海外で外国人に対して同じようにやってしまうと、「あの日本人は、何を考えているのかよく分からない奴だ、信用できない奴だ」と捉えられてしまいます。これでは、なかなか日本人の枠から抜け出ることができませんね。 ニューヨークで、日本人でジャズをやっている人々からよく聞くことですが、 「私が日本人だから差別されて、世界的なジャズミュージシャン達に、なかなか仲間に入れてもらえない、黒人じゃないとだめなんだ」などと言っている人が多いのです。 これは、こちらに住んでいるうちにだんだん分かってきましたが、才能や実力のせいだけではないと思います。本人のキャラクターのほうが、大きな原因ではないかと思います。日本にいた時と同じように、アメリカ人ミュージシャンに対しても「本音と建前」を使い分けて、いつもニコニコしていては、そりゃあ、相手は「こいつ、何を考えているのか分からない」と気持ち悪がることでしょう。 今回、私が、ファーストアルバムで初めての録音だったにもかかわらず、世界水準のアメリカ人ジャズミュージシャン達7人に、参加していただけた理由は、私が一切「本音と建前」で話さずに、率直に「本音のみ」で話をするように努めていたからだと思います。私は常に率直に物を言っていたので、彼らの多大なる信用を獲得できたのだと考えています。自分の才能のお陰だけではなく、キャラクターのお陰もあります。世界的ミュージシャンといっても、向こうだって人間なので、彼らが友達になりたくなるようなキャラに自分がなればいいのです。 * ニューヨーク育ちのアメリカ人Fとの出会い 最近、インタビューを取った人で、ミュージカルやダンスのプロデューサーがいます。彼女は、なんと、もとバレリーナ・ダンサー上がりで、敏腕のプロデューサーなので、私は以前からとても興味を持っていました。彼女とは3年前に、仕事を通じて知り合ったのですが、会った瞬間に、彼女は私に何かを感じて、 「私はあなたが何者であるか知っている!」という謎の言葉を私につぶやきました。私はびっくりして、それ以来、お互いに、「今どうしてる? 何やってるの?」と連絡を取り合っていました。私は全くの無名なのだから、今思えば、彼女は、そういう謎の勘が働く人なのでしょうね。 彼女はまだ若いのに、自分の力で何億円も(!)集めてきてブロードウェイ・ミュージカルをプロデュースしています。リンカーンセンター・フェスティバルにダンス公演を実現させたりもしています。 「よく、そんなことを実現させる能力があるなあ、すごい人だなあ」とずっと関心がありました。ただのダンサーが、そこまでのことをやり遂げる能力があるわけがないのです。企画も、時には脚本や振り付けも、企画書執筆も、資金集めの交渉も全て、彼女がやっているのですから。彼女の方こそ、タダ者ではありません(笑)! インテリに違いないと思いました。 インタビューをとっている最中に、さらに驚愕しました。日本では、言ってはならないようなことばかり、当たり前のような顔をして、彼女は普通に言い放つのです。日本とアメリカの文化の違いを目の当たりにしました。例えば、 「あなたは、もとダンサーだけれど、そんな大掛かりなプロデュースができるなんて、ただのダンサーではないでしょう?ダンサーが、そこまでやり遂げる能力はないですよ。」と私が聞いたとき、 「はい、私は普通のダンサーではありませんよ。」と答え、 「あなたは、インテリでしょう?」と聞くと、 「はい、そうです。大学は2つ出ていて、ダンス専攻と、サイコロジーと、2つの学位を持っています。ダンスだけでは、退屈です!」と言い放ちました。大学は名門コロンビアでした。 「すごいですねえええ。」と私が言うと、 「はい。実は父親が外科医なので、私に4歳からバレエ教育をつけさせてくれて、父がずっと私をサポートしてくれました。そのお陰で、16歳からプロとしてバレエ団に入り、踊っていました。私の勉強を、父親がサポートし続けてくれたお陰です。」と、彼女は答えました。 彼女はなんて率直な人だろうと、私はとても気に入って、すぐに打ち解けていい友達になりました。でも、もし、彼女のような日本人が、日本人に同じことを言ったらどうでしょうか?きっと、「たたかれる」か、「総スカン」でしょうね。 「タダのダンサーではないでしょう?」とか、「インテリでしょう?」と聞いたら、日本では、 「いえ、それほどでも・・・。そんなことないです」などと、建前を言わなければ、波風が立ってしまいます。 そのうえ、「父親が外科医だから」だなんて、日本で言ったら、それこそ、 「こいつ、自慢しやがって!」なんて受け取られてしまいますよね。 やっぱり、アメリカは自由に意見が言えて、伸び伸びと率直に物が言える風土なので、才能が伸ばしやすくていいなあと思いました。余計なエネルギーを消耗せずに、気を使わないで伸び伸びと、自分のやりたいことにエネルギーを集中させることができます。 彼女が、自分の才能を存分に伸ばして、若くから活躍しているのは、きっと、アメリカの風土の中で育ったからという要因が大きいと思います。日本人の若者が、周りに気を使って縮こまってエネルギーを無駄にすり減らしている間に、彼女は、周りに気を使わずに、率直に物をいい続けて、伸び伸びと能力を伸ばすことが出来たからだと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年10月22日 12時44分06秒
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