ベルリンの壁崩壊から20周年です。
当時は本当に驚きと感動でTV中継を見ていました。
この年の5月にポーランドで自由選挙が行われ、
レフ・ワレサ氏率いる自主管理労組「連帯」が勝利し、
次々に起こる東欧の民主化ドミノの呼び水になりました。
無血で壁が崩壊した後当時のコール西ドイツ首相が統合を宣言し、
シラーの傑作「歓喜の歌」をベートヴェン第九の流れに乗せて皆が口ずさんでいました。
平和になったというより歴史のうねりを目撃した気分になりました。
今日の20年までにもう一つのEUの統合もドイツは経験しました。
2度の歴史的な統合の末、現実問題の社会の影として、
旧東西市民の埋まらぬ格差を報道しています。
アンケートやインタビューでも壁の復活を望む声を聞きます。
もちろん壁を再構築してもあったはずの社会主義の優良児と言われた、
東ドイツの社会システムは吹っ飛んでますので、壁は単なる象徴に過ぎません。
それほど困窮しているのが事実なのでしょう。
東欧諸国はほとんど同じ運命で価値観をひっくり返された20年です。
うまく行ってる人は今のシステムが是であり、
乗り切れなかった、地に落ちた道徳や美徳が許せない者には非になります。
20年前のニュース映像では何処かで誰かが楽器を持って演奏していました。
そんな幸せな風景を現在では見る事が出来なくなっています。
ドイツの寒い冬を連想させるシューベルトの「冬の旅」の感覚です。
ヨーロッパでは11月11日を第一次世界大戦の終結の日として祝います。
人類初の非戦闘員を巻き込んだ大量殺戮がヨーロッパ全土で繰り広げられました。
フランスはパリまで20kmの距離まで国土をドイツに侵攻され、
ドイツは降伏後、独裁者と運命を共にし我が国と同じく国土は廃墟になりました。
EU統合で加盟各国は紛争解決を武力によらない意思統一で、
国境線を悲劇の舞台に選ばない事を固く誓いました。
その事だけでも、革命的でして、歓喜の歌もEUの歌になりました。
20世紀の終わりを迎えた10年に歴史のうねりを目撃した事が幸運でした。
日経新聞のコラムにハーバード大学教授のJ・ナイ氏が、
アメリカ抜きのアジア共同体の構想は無意味であると寄稿していました。
この事も既に歴史の歯車から見れば時代遅れの感覚なのかも知れません。
超大国は既に軋みが生じている事も自覚した方が良いでしょう。
グローバルな時代には人種もことさら意味を持たなくなるでしょうし、
他国に脅威をもたらす事が自国の利益になる思い込みは学習能力が無さ過ぎます。
遠くない未来において軍事力が自国の足かせになる時代が来ると信じましょう。
秋・彩々 posted by
(C)違いがわかる男